社会福祉施設経営
相 談 事 例 Q & A

平成30年度版

社会福祉法人千葉県社会福祉協議会
千葉県社会福祉法人経営者協議会

平成30年3月改訂

は じ め に

 社会福祉施設経営相談室は、平成4年10月千葉県社会福祉施設経営者協議会(当時)の相談室として発足し、国・県補助事業の福祉経営指導事業として、社会福祉施設全般の資質向上を図ることを目的に経営相談が始まりました。 現在は、県単補助事業の福祉経営相談指導事業として、千葉県社会福祉法人経営者協議会が実施しています。
 さて、平成29年4月に施行された社会福祉法改正をはじめとする社会福祉法人制度改革により、社会福祉法人が非営利法人にふさわしいガバナンスと高い透明性を備え、主体性のある自律的な法人経営に取り組み、国民に対する説明責任を果たすことが求められています。社会福祉施設・事業者においても自主性・主体性をもち、法改正に応じた取組が必要とされています。
 そこで、社会福祉施設経営相談室では、各社会福祉法人や社会福祉施設等が抱える課題への助言として専門家(弁護士、社会保険労務士、公認会計士・税理士)を配置しています。
 この度、社会福祉施設経営相談室に寄せられたケースの中から、参考になるものを専門家の監修のもと、Q&A方式の相談事例集としてまとめました。
 本書が、社会福祉法人経営・社会福祉施設運営のための一助となるために、 御活用いただければ幸いに存じます。

 平成30年 3月

社会福祉法人千葉県社会福祉協議会
千葉県社会福祉法人経営者協議会
社会福祉施設経営相談室

目 次

第1章
利用者処遇・施設経営

○遺産分割協議のための成年後見人

Q   当施設に入所している知的障害者に関し、その兄弟から、施設の嘱託医の診断書の取り寄せに協力してもらいたい、との依頼がありました。亡くなった親の遺産について、入所者が放棄する内容の遺産分割協議をさせるために、成年後見人選任の申立をするようです。
施設として、入所者の権利擁護のためにするべきことは、ないでしょうか。
A

成年後見人を選任することは、本来、意思能力に欠ける御本人(成年被後見人、以下「本人」という)の権利を擁護するために必要なことです。しかし、成年後見人には、本人の代理として広範な権限があり、たとえば遺産分割協議をするにあたり、家庭裁判所の許可など直接の監督があるわけではないので、御本人の利益に反する内容で決着させることも不可能ではありません。

 本件では、親の遺産の分割が目的とのことですが、申立をする兄弟は、親の遺産分割について本人と利害対立する関係にあるので、たとえ成年後見人となっても本人を代理することはできません。その場合には、家庭裁判所に別の特別代理人を選任してもらうことになります。そして、特別代理人の選任申立に際しては、遺産分割協議書案を添付しなければならないことになっていますから、本人の利益を損なう内容になるとは考えられません。

 このように遺産分割の場合には、他の相続人では、成年後見人として本人の代理行為ができないことから、普通は、家族以外の第三者が成年後見人に選任されることになります。申立書には、成年後見人候補者を記載する欄がありますが、本件のような場合には、申立人が相談している弁護士や司法書士が、候補者として記載されることもあります。

 しかし、家庭裁判所は、申立人と本人あるいは家族間で対立する可能性がある場合、利害対立する当事者が推薦する候補者は選任せず、全く別の中立的な立場の弁護士などを選任するのが普通です。

 家庭裁判所としては、このような利害対立の問題があるのかどうかを知りたいので、施設からその点に関する情報を提供すれば歓迎されます。

 施設入所者に成年後見人をつける場合、家庭裁判所の調査官が本人の状態を確認するために施設に電話をかけてくることがありますので、そのような機会を使って、調査官に対して、『本件については問題があり、施設としては本人のために心配しているのだ』という認識を伝えてください。家庭裁判所は、中立的な立場の弁護士などを後見人に選任するはずであり、本人が相続できないなどという事態は避けられるはずです。

○施設内事故への対応

Q   特別養護老人ホームにショートスティ施設を併設していますが、その利用者の方が、施設内で歩行中にふらついて転倒され、骨折してしまいました。その身内の方から、施設に落ち度があったのではないかとして、施設の責任を追求するかのようなことを言われています。
当方としては、防ぎようがなかったように思うのですが、どのように対応したらよいでしょうか。
A

転倒による骨折は、高齢者の施設内事故としては一番相談の多い事例です。寝たきり等の重大な結果となることが多い反面、後遺障害として認められにくい等の事情があり、保険会社の提示額は必ずしも高くなく、家族もなかなか納得しないことが多いように思います。
 施設に「過失」があって、そのために利用者に傷害を負わせてしまった場合、施設は不法行為責任として、あるいは安全を配慮すべき契約上の義務に違反したとして、損害賠償の義務を負います。
施設に「過失」があったかどうかは、
① そのような事態について予測が可能であったかどうか(予測可能性)
② そのような結果を防ぐことが可能であったか(結果回避可能性)
という点から判断されます。

 今回の転倒事故が、床に段差があるとか滑りやすくなっていた等の施設の設置の瑕疵によるものではなく、他の方とぶつかりそうになったとかの第三者が原因という事情もなく、要するに外部的な原因が全く見あたらないというのであれば、その入所者が転倒する可能性をどこまで予測し得たかということになります。高齢者であれば誰でも程度の差こそあれ、ふらついて転倒する可能性があるともいえるので、その判断はかなり微妙なものとなります。どの施設でも入所時に行うことですが、身体疾患の有無程度、家族からの聞き取り調査、実際の歩行の様子を見た結果等を総合して、「歩行中、常時の見守り・介助が必要であったか」を判断することとなります。

 したがって、このような事故が発生した場合、救護措置を講じ、近親者への連絡を済ませたら、(この報告が遅いというのは、家族の不満としてよく聞くことです)、事実関係をすみやかに精査するべきです。いつ、どこで転倒したのか、現認した職員・入所者などがいるか、現認した人がいない場合には転倒前の本人及び周囲の状況はどうであったのか、などです。

 なお、施設の関係者がそれぞれ違う内容を報告したために、家族から、施設の説明は信用できないと思われることもよくあります。したがって、家族への対応は、窓口を一本化して責任者が対応するべきです。とりあえず、担当者の謝罪が必要なこともありますが、事前に打ち合わせをするべきです。
 さらに、家族から、施設の責任をどのように認識しているか、書面で回答を求められることもよくあります。家族は、その書面を弁護士に見せて施設の責任を追及するかどうかを決めることもよくあるので、施設において過失がなかったと考えられる場合には、その内容を丁寧にわかりやすく説明するべきです。

 また、普通は施設の賠償保険に入っているでしょうから、保険会社への連絡が必要です。保険会社は、施設に有責(過失)が認められた場合に初めて賠償金を支払うことになりますから、有責性の有無についても相談に乗ってくれるはずです。ただし、交通事故のように示談代行はしませんので、相手方との交渉は施設がしなければなりません。最終的には、法律上の賠償義務はないと考えていると断った上で、見舞金を支払うとか、治療費等の実費負担をする旨の申し出をすることによって解決している例も多くあります。

 追って、裁判等になった場合、市や県に提出する「事故報告書」は一番基本的な文書になるので、丁寧に誤解を受けないように記載するべきですし、本人の特性や、見守りの程度が記載されている介護記録・日誌等が施設に有利な証拠となることも多いので、日頃から、まめに書類を作成しておくことが重要です。

 最後に、マスコミ対策ですが、きちんと施設の主張について説明することで、記事の大きさや内容が違ってくるので、積極的に対応すべきだと思います。

○利用者(児童)の加害行為

平成28年3月一部改訂

Q   知的障害児の施設を運営していますが、利用者(15歳)が施設の利用中に、他人の車を傷付けてしまい、その方が大変に立腹して、警察を呼んで被害届を出されたそうです。今後、どのようなことが問題になりますか。
A

本人の刑事責任と民事責任、施設の民事責任が問題となりえます。

1 本人の刑事責任
 中度の知的障害(IQ36〜50以下)の場合、心身耗弱(物事の善悪を判断する能力が著しく減退)として刑が軽減になる可能性があります。また、知的障害者の方は弁解が苦手で、やっていないことまで認めさせられることがあります。    
 従って、施設においては警察に対して、知的障害者であるとしてその程度を説明することが本人保護につながることが多いですし、事案によっては、早期に弁護人を付けて示談等を進めてもらうことも考えられます。
 近時、窃盗等の通常の犯罪については、早期に国選弁護人が付くことになっていますが、刑罰の軽い器物損壊罪の場合には付きません。そこで、施設としては、保護者と協議のうえ弁護士に連絡するなどして、知的障害者について理解のある弁護士を弁護人に選任してもらうように助言することも考えられます。

2 本人の民事責任
 損害賠償責任が発生するためには、不法行為能力が必要で、通常、中学生くらいから認められることになっています。従って、知的障害のために中学1年生程度の能力もないという場合には、本人は賠償責任を負わないということになります。

3 監督義務者等の責任
 このように、本人が賠償責任を負わないということになると、実は大変やっかいです。監督義務者(親権者、児童福祉施設の長)や代理監督者(監督義務者に代わって監督すべき地位にある者)が代わりに責任を負わされることになっています。監督義務を尽くしていたことを証明した場合には責任を免れることになっていますが、その証明はなかなか認められていません。知的障害児が施設利用中である場合、現場の付添い職員はこの代理監督者になることが多く、本人に代わって損害賠償責任をを負わされることになります。ただし、施設が加入している損害賠償保険は、このような代理監督者責任に該当する事例でも保険適用されますので、保険会社に連絡してください。

○入所者に対する金の無心

Q   当施設では、入所している知的障害者の障害者年金を管理しています。最近、ある入所者の父親から、金を貸してもらいたい、との要求が頻繁にあります。施設としてどのように対応したらよいでしょうか。
A

入所者には一応、意思能力が認められるようですので、最終的には本人の意思にゆだねるべき問題です。また、施設に入所している方にとって、たまに面会に来てくれる親族は心のよりどころであって、その要求に反対することが困難であることも多いようです。

 しかし、障害者年金は、あくまで本人のために国費から支給されるものであり、知的障害者においてもグループホームその他の施設外での生活が目指されるべきであって、そのために必要なお金ですから、その目的外では使えないという方向で、親と本人を極力、「説得」すべきだと思います。

○保護者とのトラブル

Q   施設利用者の保護者の中で、何かにつけて施設の方針に反対し、すぐに感情的になって職員や責任者に対し大声で怒鳴る方がいます。施設の行事のときなどでも、他の保護者の前で騒ぎたて、業務の円滑な遂行ができない状況になってしまいます。
この利用者には、施設の利用をやめてもらいたいと考えていますが、何かよい方法はないでしょうか。
A

公費の助成を受けている施設においては、利用者を受け入れなければならい一般的義務があるとされており、正当な理由がなければ施設の利用を拒否することはできません。
 本件において、その正当な理由があるかどうかですが、当然、双方の意見が異なることが予想されますので、一方的に利用中止等の措置を講ずれば、ますます混乱することが予想されます。

 仮に、先方の要求が不当な場合にどのように対応すべきか、という問題になりますが、「相手の言うことを全部聞く、ただし、その要求に従う必要はない」ということになろうかと思います。難しい対応になるので、施設長等の責任者が対応することになると思います。
 もちろん、エスカレートすれば、利用をやめていただくしか方法がないという事態もありえます。

 その場合には、利用者側から県に苦情を持ち込むとか、弁護士に相談するなど、問題が公にされる可能性があります。その結果、利用者側による一方的な見解が新聞に載ることもあります。

 そこで、施設において正当な理由があることを証明するために、トラブルの経過について、出来るだけ詳細な業務日誌をつけておくことが重要です。(日付だけではなく時刻まで記載すれば、信用性が高まります。)
 また、施設としては、場合によっては、利用を打ち切るしかなくなることを予告するなど、利用者に対しやれることは全部やったということを証明するために、利用者に対して要望書やその他の連絡文書を送っておくことも有益です。

○サービス利用料の不払いへの対応

平成29年3月掲載

Q   特別養護老人ホームを経営していますが、それなりの年金収入があるはずの入所者について、通帳を管理している長男が支払を遅らせるようになり、未収がかなりの額になってしまいました。このままでは、利用契約を解除せざるを得ないと連絡しても無視されていますが、何かよい方法がありますか。
A

事業の失敗等により生活に困窮している子どもが、親の年金を使い込んでしまって、利用料を払ってくれないということは、ときどき見かけます。

  サービスの提供と利用料の支払いとは契約上の対価関係にあるので、利用料の不払いが重なれば(少なくとも3ヶ月分以上)、サービス利用契約の解除理由となるので、利用契約を解除することになると警告することが考えられます。

  しかし、社会福祉施設が、利用者本人には何の落ち度もないにもかかわらず、必要と考えられる支援を拒否する結果となるので、契約解除は最後の手段と考えるべきです。

  また、実際に契約解除をしても、そのような保護者は利用者の引取に協力しないことが予想され、利用者を放り出すようなことは許されないことから、解決に結びつかないということもあります。

  債権管理の基本は、相手方の家に出向くなどして、根気よく督促を続けることです。また、保護者ないし本人の生活環境を整えることに協力する(債務整理の弁護士を紹介する、生活保護を勧める)、経済的負担の軽くなる別の介護方法を見つけることに協力する等も考えられます。

  しかし、その子どもが最後まで自分のことしか考えないようであれば、それは高齢者に対する経済的虐待として、成年後見制度の利用を検討するべきです。選任された成年後見人が預金管理を行うことになります。そこで、他の親族に連絡して、成年後見の申立をしてもらう、市町村長申立の制度を利用するなどが考えられます。

○施設側からの契約解除

Q   知的障害者更生施設を経営しています。入所契約を締結している知的障害者の方ですが、最近、他の入所者へ危害を加えることが多くなり、危害を受けた入所者の保護者から、どうにかして欲しいと言われています。薬による抑制にも問題があると思うので、問題行動を起している入所者の親に対して、施設からの契約解除を規定した入所契約を示して、事実上、退園を促したいと思いますが、法律上の問題がありますか。
A

もともと居宅支援事業者及び援護施設設置者には、措置制度による委託を受けた場合には、「正当な理由」がない限り、これを拒んではならないという受託義務が規定されています。(知障法第21条の4)さらに、契約制度においても、市町村長からの利用のあっせん、調整及び要請に対し、「できる限り協力しなければならない」(同法第15条の4)とされており、このことから、施設には、契約についての応諾義務があるといわれています。

 ところで、現行の制度は、障害を有する方が、適切な福祉サービスを選択するという前提に立ち、サービスを提供する事業者とサービスを受ける側とが対等で契約し、サービスの向上を図ることを目的にしています。
 このように、対等な契約である以上、利用者が義務を果たさないなどの正当な理由がある場合、たとえば、自己負担額を払わない等の場合には、事業者は民法541条の定めるところにより、その利用契約を解除することが可能です。
 さらに、そのような債務不履行そのものではなくとも、自傷他害が著しい場合などの特別の事情がある場合に、施設側から契約を解除する、あるいは、契約更新をお断りするという条項も、その内容に「合理性」がある限り認められると考えます。しかし、そのような対応が、最後の選択であることは言うまでもないことです。

○居宅介護事業者からの契約解除

Q   ある利用者について、担当ヘルパーの一人が、病気により長期休暇となることから、新しいヘルパーを派遣しようとしたところ、何でヘルパーを代えるのか、との苦情が発端となり、その利用者との関係が極めて悪化しました。
先日などは、外で話をしている最中に、突然、利用者が「誰か助けて!」とか「この人はうそつきです!」と騒ぎたて、警察に電話するなどの騒動まで起きました。
そこで、この利用者との契約を打ち切るしかないと考えるようになったのですが、利用者も意地になって、今では、誰でもよいからヘルパーを派遣しろと要求し、行政にも苦情を訴えるようになりました。
しかし、これまでの経過から考えると、今後も問題が起きることが明白ですので、ヘルパーの派遣を打ち切りたいのですが、問題があるでしょうか。
また、どうして派遣できないかを書面で示すように、要求されていますが、応じなければならないでしょうか。
A

公費による補助があるなど、公的枠組内で行われている福祉に関する事業においては、事業者には契約の応諾義務があるとされています。しかし、正当な理由があれば、サービス利用契約書に取り決められている契約解除条項によって、事業者から契約を解除することもできるはずです。

 本件では、同じ地区に多数の居宅介護事業者がいるため、当該事業者が契約を解除しても、利用者にそれほど大きな不利益を与えるとはいえない中で、虚偽の理由で警察を呼ぶ等までされていることを考慮すると、利用契約書に記載されている事業者からの解除理由の一つ(利用者が故意又は重大な過失によりサービス事業者若しくはサービス従事者の信用を著しく傷つけることによって、本契約を継続しがたい重大な事情を生じさせ、その状況の改善が見込めない場合)に該当するとして、契約を解除することも認められるはずです。

 なお、事業者からの契約解除は異例のことですので、書面での理由開示の要求には応じるのが適当であると思います。

○居室退去時の原状回復義務

Q   ケアハウスを経営していますが、入居時に退去していただく際には、原状回復として、居室について入居時と同様になるようにリフォームしていただくことになっており、入居契約にもその旨は、明記しております。
ところが、今回、退所される方の御家族から、法律上、このようなリフォームの義務はないとして、強く抗議されているのですが、リフォーム代金を請求することは許されないのでしょうか。
A

一般の賃貸住宅の場合、賃料には、経年変化や通常使用による損耗などの修繕費用が含まれており、「原状回復」とは、借りた当時の状態に戻すことではなく、借主の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗を復旧することを意味する、というのは、確立された解釈です。(判例。国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」)

 大家が、原状回復を理由として敷金の返還に応じない場合、借家人は、簡易裁判所で少額訴訟という簡単な手続きを申し立てることによって、きわめて容易に回収に成功しているのが実情です。
 さらに、特約で通常損耗についても原状回復することを明示しても、そのような特約は無効とされることが多いと思われます。(とりわけ、平成13年に施行された消費者契約法第10条)

 ところで、社会福祉法人が経営するケアハウスの場合は、営利目的の賃貸住宅とは料金設定が異なり、利用料(管理料)には、修繕費用は含まれていないことから、同様に扱われては困るとの意見がありうるところです。
 しかし、利用者の立場からすると、ケアハウスも建物賃貸借の一種であるということでは同じであり、多分、裁判になれば、「原状回復」の内容については、不動産の賃貸契約に準じた扱いにされる可能性が高く、したがって、最初からそのような対応をするというのがトラブル防止には適当だと思われます。

 どうしても特約を認めてもらいたいという場合には、その特約が必要な理由を重要事項説明書に明示し、その部分を朱書きするなどして、契約者がその内容と理由を確実に認識したうえで、納得して契約したであろうという体裁をとれば、その特約は有効とされる可能性が出てきます。

○身寄りのない入所者の死亡

平成29年3月一部改訂

Q   特別養護老人ホームを経営していますが、入所者が亡くなりました。まとまった預貯金はありますが、身寄りがないため、葬式を挙げることもできません。利用料にも未収が残り、医療費の支払いもできないので、困っています。
A

墓地、埋葬等に関する法律第9条1項により、「死体の埋葬または火葬を行う者がいないとき又は判明しないとき」には、死亡地の市町村がこれを行わなければならないとされているので、地元市町村の役所へ連絡してください。

 なお、成年後見人が付いている場合、これまでは本人死亡の瞬間に権限がなくなったのですが、民法の平成28年4月改正(円滑化法)によって、成年後見人が、家庭裁判所の許可の下に死体の火葬・埋葬に関する契約の締結ができるようになり、また、弁済期到来の債務の支払いをすることもできるようになりました。したがって、未収の利用料等は成年後見人に請求することができます。

 次に、財産関係ですが、相続人がいないために困る場合には、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てることができます。その申立ができるのは、法律上の利害関係人であり、入所施設も、自己負担金の債権者として、あるいは保管物の引き渡し義務者として、申立をすることができます。申立をするにあたり、相続財産管理人の報酬に相当する費用の予納を求められることがありますが、相応の預貯金があることを説明すれば、不要となります。

 これらの支払いをした後に残った財産は、国庫に帰属することになります。亡くなった方と特別の関係にあった者は、家庭裁判所に対して特別縁故者として財産の分与を請求することが認められています。
 入所していた施設がそのような申立をするのは適当ではないでしょう。御本人が、自分のためにお金を使わないことが、結果的に施設の利益となってしまい、利害が対立することになるからです。

○死者情報の第三者提供

平成28年3月一部改訂

Q   特別養護老人ホームで入所者が亡くなりました。その後、遺族の一人の代理人を名乗る弁護士から、利用契約書その他の入所者の署名がある書類や、介護記録のコピーをもらえないかとの申し出がありました。その遺族の方は、入所者の生前、全く面会に来なかった方なので、そのような方に開示するのは、御本人の意思に反するようで気乗りがしませんが、応じなければならないでしょうか。。
A

個人情報保護法は、生存者の情報の保護について規制するものであり、死者に関する情報は同法が直接に保護するものではありません。しかし、死者情報についても、個人情報と同等の安全管理措置を講じ、開示要請に対しては安易に応じることなく、死者本人の生前の意思や名誉等を十分尊重した対応をすべきことと考えられています(医療・介護関係事業者に対するガイドライン)。

 個人情報保護法では、本人の同意がなくとも、法令に基づく場合には、個人情報の提供ができることとされています。法令に基づく情報提供としては、(1)裁判所からの送付委託に基づく場合があり、さらに(2)弁護士法第23条の2に基づく弁護士会からの照会もありますが、後者の場合には、その具体的理由から必要性をチェックする必要があるとされています。

 では、本件で具体的にどのように対応するかですが、まず、開示を要求している弁護士に対して、どうして開示を請求するのか、その理由を具体的に聞くべきです。

 よくあるケースですが、入所中に作成された遺言書や養子縁組届出書について、意思能力がなかったことを理由とした無効の主張ができるかどうかを確認したいというものです。この場合、情報の開示を求めている共同相続人の利益は具体的であり、この点の開示がなければ、迅速、公正、公平な遺産分割は困難だと言えますので、一応、開示を求める合理的な理由はあると判断されます。

 そこで、生前に本人の意向を代弁していたと認められる家族(身元保証人)の同意が得られるならば、そのまま開示してもよいと思います。

 そのような同意が得られないのであれば、正規に弁護士法に基づく照会をしてもらい、必要に応じて身元保証人に対して法令に基づく照会であるのでと断って、開示するのが適当だと考えます。

○施設の広報誌への個人情報の掲載

平成28年3月掲載

Q   高齢者の居宅介護事業を営んでいます。認知症の方のご家族から、その症状や対応の仕方についてよくわからないという声が多いことから、参考に供するために、会報で事例を掲載させていただくことがあります。勉強になったと言われることも多いのですが、先日、あのケースは私の親のことでしょう、個人情報保護の観点から問題があるのではないですか、との指摘を受けました。名前はAさんにするなど、誰か分からないように配慮したつもりですが、以前の職業については、現在の特性に影響している可能性があることから、記載してしまいました。個人情報保護法に違反することなのでしょうか。
A

個人情報保護法は、個人情報によって識別される特定の個人の数が5000を超えない事業者については、直接の適用になるものではありません(ただし、この要件は近々削除される予定です)。しかし、そのような事業者であっても、同法律の趣旨に適合した行動をとることが妥当だとされています(個人情報保護法については、厚生労働省による「福祉分野における個人情報保護に関するガイドライン」が一番の参考資料であり、インターネットで簡単に入手できます)。

 個人情報を第三者に提供するためには、その個人の同意が必要です。個人情報とは、個人を識別できる情報であり、それが他の情報とあいまって特定の個人と識別できる場合にも個人情報となります。今回の件では、以前の職業の記載が問題となりますが、その他の記載内容を加味して考えても、特定の個人と識別することは困難であるように思えます。したがって、本件は、個人情報保護法に違反しているとは言えないと考えられます。

 このように、完全に匿名化されているために、個人情報保護法に違反していないとしても、その内容が「具体的な事実」であるため、当事者の家族がそれを読んで、自分の親だと分かり、それが公表されることについて、いやな感じがした、苦痛を受けたという場合(たとえば、認知症の親がさらし者にされた、笑いものにされた等と受け取られてしまった場合)、プライバシー(知られたくない権利)を侵害しているとして、法的問題になる可能性があります。したがって、本件のような「具体的な真実」を掲載するに当たっては、どちらにせよ、あらかじめ同意を得ておくことが適当だと考えられます。

 なお、事前の同意ですが、本来、ご本人の同意になるはずであり、家族の同意は本人の意思を推測させるものにすぎません。本人の人格の尊厳に関わるような事実については、慎重に取り扱うべきです。

○施設居室内での貴重品紛失の責任

平成24年3月掲載

Q   特別養護老人ホームを経営しています。利用者の入所にあたっては、「個人で金銭・貴重品をお持ちになる場合は事故管理の範囲内でお願いしたい、施設では紛失等の責任は負いかねます。」と御説明し、その旨を重要事項説明書に記載し、御身内の方に説明を受けたとして署名押印をしていただいています。
ところが、先日亡くなられた方の遺族から、入所後に指輪がなくなった、施設職員が盗んだとしか考えられない、また、施設には管理責任があるはずなので、賠償してもらいたいと強く要求されました。応ずる必要があるのでしょうか。
A

職員が盗んだという証拠があれば、使用者である施設法人が賠償責任を負うのは当然です。しかし本件では、施設職員が盗んだとか紛失したという証拠はありません。むしろ、もともと利用者は判断能力がしっかりされており、その後、認知症を発症したという経過の中で、御自分から指輪の紛失について全く主張されていないことからすると、職員が盗んだとか紛失したというような事実はなかったものと考えられます。

 問題は、前記免責条項がありながら、施設内のことであるからという理由で、施設が管理責任を負うことがあるかどうかです。免責条項については、それが、消費者の権利を制限し、民法の基本原則に反して消費者の利益を一方的に害する場合には、無効となる可能性があります。(消費者契約法10条)

 しかし、老人施設においては、指輪等の小さな物品や貴重品について、御本人の判断能力が低下することによって紛失等が起こりやすくなることは自明のことであり、又、周囲にも認知症の利用者がおられて予想外のことが起こりうる環境にあるわけですから、施設が責任をもって管理することはもともと不可能なことです。したがって、あらかじめ施設では責任を負えないので、貴重品は持ち込まないでほしい、そうしても持ち込む場合には自己責任でお願いしたいという内容の条項は、特に利用者に対して不利な内容とは考えられません。

 したがって、本件で施設が賠償責任を負うことはないものと考えます。
 ただし、御本人も家族も初めての体験ですので、そのことは重要事項説明書に記載するだけでなく、いろいろな機会を使って、繰り返し周知させておくことが好ましいと考えられます。

○理事長と法人の利益相反行為

平成30年3月掲載

Q   当法人の施設の隣に、理事長個人が所有している土地があります。施設内の駐車場が足りなくなってきたので、この度、法人が、その理事長の土地を駐車場として有料で借りることにしました。何か、注意すべき点がありますか。
A

株式会社、社会福祉法人、公益社団法人、その他すべての法人において、法人の代表者ないし役員が法人との間で経済的取引をすることは、自己取引(代表者の場合)ないし利益相反行為となり、役員らが自分の利益を優先して、法人の利益を害することのないようにすべきとされ、そのための規定が置かれています。
 旧社会福祉法(平成29年改正前)では法律上は理事全員に代表権が認められており、定款で特に理事長等に代表権を制限しているのが普通でした。そこで、理事長と法人の利益が相反する場合等には定款で職務代行理事が代表権を持つとして(代表権の復活)この職務代行理事が法人を代表して理事長との取引を行っていました。万一、定款でそのような規定を欠いている場合には所轄庁に特別代理人を選任してもらわなければなりませんでした。
 ところが、新しい社会福祉法では法人の代表は理事長しかできなくなったために、その職務代理を設けることができなくなりました。   今回のような理事長と法人との利益相反の場合には一般社団法人に関する法律を準用することとされ、結果として理事会での承認と報告さえあればよいことになりました。
 一見緩くなったように見えますが、新設された理事の責任の規定中に利益相反行為の承認決議に賛成した理事はその利益相反行為によって法人に損害を与えた場合は連帯責任を負うことになったので、必ずしも緩くなったとは言えないものです。
 したがって、理事長が土地を貸すような場合には適正地代以上のものを受け取っているとの疑惑を招かないため、慎重に相場を調査して少し安めで借りる位が穏当だと考えます。

○法人役員の責任

Q   外部の方に理事や評議員をお願いしようとしたところ,社会福祉法の改正で役員が損害賠償責任を負うことになったと聞いたので心配だと言われました。どのように対応したらよいですか。
A

社会福祉法の平成28年の改正で、理事、監事、評議員、会計監査人が任務を怠った場合に損害賠償責任を負うとの規定が設けられました。1つは法人に損害を与えた場合の法人に対する責任で、もう一つは第三者に損害を与えた場合の第三者に対する責任です。
 結論から言うと、評議員は業務執行に直接かかわらないので責任を問われることはまずなく、外部理事も責任を問われることは少ないと考えられます。(例外として、理事と法人の利益相反行為に関して承認の決議に賛成した理事は法人に損害が発生した場合に任務を怠っていたと推定されて、責任を負います)
 これに対し、業務執行を担当していた理事については責任を問われることがありえます。たとえば、利用者に対する虐待、職員の過労死・セクハラ、職員の横領等について、これを知りながら放置していたとして責任を問われる場合です。
 法人に対する責任について、実際に法人が当該理事に対して責任を追及するという場面は考えにくいのですが、大きな不祥事が新聞沙汰になったような場合に所轄庁から法人に対して関係理事の責任を追及すべきだと指導されることはありえると思います。
 業務担当理事についても、それなりに職務を全うしていれば責任を追及されることはないと思いますが、安心料として責任を追及された場合の保険に入っておくことも考えられます。そうすれば、外部の方にも安心して役員に就任していただけます。

第2章
職員処遇・安全衛生

○労働者の範囲

Q   当施設では、就業規則の改正を予定しています。その際、労働者の過半数を代表する者の意見を聴き、意見書の添付が必要とされていますが、当施設には労働組合がありません。
労働者の過半数としての労働者には、パート職員や臨時雇用職員も「労働者」に含まれますか。その他留意点について、教えてください。
A

労基法第90条では
 「就業規則の作成または変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においては、その労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては、労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。」とされています。

2 ここでいう「過半数で組織する労働組合」とは、
 「当該事業場のすべての労働者のうち、その過半数の労働者が加入する労働組合をいう」とされています。
 貴施設には労働組合がないことから、全職員の過半数の代表者を投票や互選や挙手によって選任することになります。就業規則が正規の職員やパート職員等に区分してあっても、事業場内の雇用形態が違うだけであって、いずれも労働者に含みます。

3 「意見を聴く」とは、文字どおり意見を求める意味であり、同意を求めたり協議を行うことまで要求するものではありません。その意見を尊重すべきではありますが、使用者は、その意見に拘束されるものではありません。
 なお、過半数を代表する者には、事務長や課長等の役職者は含みませんので、念のため申し添えます。

○改正労働契約法について

平成25年3月掲載

Q   当会では、多くの有期労働契約職員が在籍しますが、改正労働契約法に関連して以下の項目について明確化しておきたいと思います。
① 1年間の有期労働契約を5年目まで継続して雇い止めすることについての問題点
② 繁忙期のみ短期間雇用(4カ月×2回)を毎年継続している場合、5年間継続すると、以降の契約は無期労働契約の対象となるか。
③ 雇用契約の際に、無期労働契約への転換の権利が発生しても行使しないよう予め取り交わすことについて
④ 正規職員と同じ処遇が求められる労働条件について
A

1 ①の1年毎の雇用契約を5年で打ち切ることについて、契約満了時点で雇止めすることは、原則として可能です。ただし、職務内容・責任、契約更新手続きその他から、雇い止めすることが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないといったこともあり得ます。(雇い止め法理)

②の繁忙期のみ短期間雇用(4カ月×2回)を毎年継続しても、契約期間が2カ月超4カ月未満のケースでは、空白期間(無契約期間)が2カ月以上あれば前後の期間は通算されませんので、5カ年以上それを繰り返しても無期転換対象とはなりません。

③ 無期転換非申し立ての取り交わしについて、要件をクリアすれば当然の結果として、労働者側に発生する権利を事前に申し立てないよう取り交わすことは法令の主旨に違反し、この部分については無効とされるものと思われます。

④ 正規職員と同じ処遇が求められる労働条件についてですが、労働契約法第20条では、職務内容その他正規職員と同等であるにもかかわらず。有期契約であることだけをもって労働条件に差をつけることを禁止していますが、この場合の労働条件とは、賃金や労働時間のほか、災害補償、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生等一切の処遇を包含するものです。

 2 上記から、まずは貴会の職務の洗い出しを行い、誰がどの職務を担当しているかを明確にするとともに、職務内容や責任が同等であるにもかかわらず有期契約であることだけをもって処遇に差をつけているとすれば、この機会に是正することが望まれます。また、短期間職員に関しても短時間正職員といった制度の導入を検討することも重要です。

○労働協約について

Q   当法人では、労働組合が結成されており、今回、労働協約を締結したいとして、その文案が示されました。
この団体交渉に対して、どのような姿勢で臨めばよいでしょうか。
A

今回初めて労働協約を作成されるとのことですので、とりあえずは法律上当然の事項、あるいは常識的に問題のない事項を中心に決めたらよいと思います。もちろん、労働組合はそれ以上の内容を求めてくるわけですが、それをただちに拒否して、以後一切、団体交渉を拒否するということをすれば、不当労働行為になってしまいます。

 要するに、法人側には、誠実に労働組合と団体交渉する義務があり、組合の要求に対する回答や、自己の主張の根拠を具体的に説明したり、資料を提供するなどして、合意達成の可能性を模索する必要があります。

 そのような努力をしたにもかかわらず、主張の対立により、交渉が進展する見込みがなくなれば、団体交渉の継続拒否も許されます。
 なお、書面の交換による交渉に固執して、直接交渉に応じないことも、団交拒否に該当します。

 経営者側の考える労働協約のモデル条項等については、経営者団体などから出版されていますので、それらを参考にしてください。

○労働時間の把握の方法

Q   当施設は、最近まで労働時間の管理にタイムレコーダーを使用していましたが、職員が終業時刻ではなく、帰宅時刻に刻印することも多く、労働時間の把握が困難でした。
そこで、出勤簿に切り替え、時間外勤務については指示書により管理していますが、これでよいでしょうか。また、注意すべき点について教えてください。
A

労働時間の管理の対象となる労働者は、管理・監督者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者の場合は、みなし労働時間が適用される時間に限る)を除く全労働者です。
 また、労働時間を適正に把握するための方法は、原則として、次によるものとされています。
① 使用者が自ら現認することにより確認し、記録すること。
② タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。
 なお、①の「自ら・・・確認」とは、使用者自ら、又は労働時間管理を行う者が、始業時刻や終業時刻を直接確認することであり、その確認された時刻については、当該労働者自らも確認することが望ましいとされています。

 2 貴施設の場合、時間外労働については指示書によって管理しているとのことですが、時間外労働のカットや不支給が生じないように、当該時間の確認や記録は、客観的に容認される方法を採用するようお勧めします。
 特に、始業前や終業後のミーティングや会議等、使用者の管理監督下にあって直接労働を伴わない時間外労働については、留意してください。
 なお、この労働時間の記録に関する書類は、労基法第108条の規定により「その他労働関係の重要な書類」に該当し、義務として3年間保存しなければなりません。

○高齢者の雇用延長

平成25年3月全部改訂

Q   当会は、就業規則に定年60歳、その後労使協定に定める基準をクリアする者については、1年更新の嘱託職員として65歳まで継続雇用することと規定していますが、高齢者雇用安定法の改正に対応し、どのように就業規則を改定したらよいでしょうか。
A

1 平成24年8月に成立した改正高齢者雇用安定法では、以下のような項目を決定し、平成25年4月1日より施行することとなりました。
① 継続雇用制度の対象者を限定できる基準の廃止
② 継続雇用制度の対象者を雇用する企業の範囲をグループ企業まで拡大
③ 義務違反の企業に対する公表規定の導入
④ 年金受給開始年齢に到達した以降の者を対象に基準を存続させる経過措置
⑤ その他

2 さて、貴会では労使協定により継続雇用する者を限定する基準を設定しているとのことですが、平成25年4月1日以降に60歳に到達する職員に対しこれを適用することはできなくなります。すなわち、60歳到達以降も継続雇用を希望する職員すべてに対し、貴会として呈示できる(継続)雇用条件を呈示することが必要となります。
 ただし、前項④に記したように平成37年3月末日までの経過措置が認められていますので、原則、希望者全員を対象とする継続雇用制度導入が義務ではありますが、部分年金の受給開始年齢に達した以降の職員(下記票参考)に対しては、労使協定に定める基準を引き続き適用するといったことが可能です。
 以上から、貴会としては、①定年制の廃止、②定年の65歳以上への引き上げ、③60歳到達者で継続雇用を希望する職員全員を対象とする65歳以上までの継続雇用制度の導入、③と同時に年金受給開始年齢に達した以降の職員に対する基準の設定(労使協定で定める)といった項目の中から一番適する内容で就業規則を改定することが必要です。

平成25年4月日から平成28年3月31日 61歳
平成28年4月1日から平成31年3月31日 62歳
平成31年4月1日から平成34年3月31日 63歳
平成34年4月1日から平成37年3月31日 64歳

*経過措置を利用する場合、年金受給開始年齢以上の職員を対象とするということであれば、労使協定を改定せず、そのまま利用することは差し支えありません。

○職員の整理解雇

Q   当施設は保育所を経営していますが、郡部のためか毎年入所する子供の数が減少して定員割れが続いています。そこで、入所人員に見合った職員の数まで職員数を減らしませんと経営が成り立たなくなっています。
このような状況ですので、一部の職員に退職してもらうか、あるいは解雇のやむなきに至るものと思われますが、その場合の手続きについてお尋ねします。
A

先ずもって、施設側の苦しい経営状況について、職員の理解を得なければならないと思います。その上で希望退職の募集を求め、また、他の同業施設に紹介する労を執るとか、それでも応募がなければ指名解雇或いは整理解雇を執らざるを得ないと考えられます。
 整理解雇を行うには、①整理解雇の必要があること ②解雇を回避するための措置をとっていたこと ③対象者の人選の基準が合理的であり、かつ、運用でも合理的であること ④職員に対する説明、協議を十分に行ったこと、の要件をすべて満たすことが求められています。
① については、長期的にも入所児童の回復が見込めず、経営の合理化に整理解雇が必要であることがあげられ
② は役職者の報酬や賞与の減額、ワークシェアリングの実施、新規採用の中止等の措置をとったこと
③ については、性別や信条などを対象とした公序良俗に反するものや、労働組合に加入している者だけを対象とするなどの違法行為あるいは施設側の恣意的感情での運用は避けなければなりません。
④ は施設の全職員に対して、経営の危機状況や、施設の考えている解雇回避措置などについて十分な説明をおこない、職員の意見を汲み取り、労使間で審議を尽くしたかが問題となります。
 いずれにしろ整理解雇は、万全を尽くしても回避できない経営の危機状況に至ってのみ実施するものとお考えください。

○職員の解雇

Q   当施設の職員で、6年間ほど在職の女性調理員が、内科医から腱鞘炎との診断を受けました。そこで、整形外科で精密検査を実施した結果、慢性リュウマチと診断され、6月15日から休職となりました。
当初は有給休暇として給与を支給しましたが、その後は健康保険の傷病手当の受給に切り替えました。病状から見て、業務に復帰する可能性が薄いので、解雇しようかと思いますが、どのような手続きが必要でしょうか。
A

まず、就業規則に休職についての規定があると思いますが、その条項に沿って解決することになります。たとえば、休職に該当する事故が生ずれば、一定期間勤務した職員には一定期間の休職期間が与えられます。

 この事故が私傷病であれば、この傷病休業期間満了後においても、職員の傷病が完治しておらず、従前の業務に耐えられないと認められる場合には、復職可能な状態にあるとはいえませんので、退職の効果が生ずることになります。

 もし、休職事由消滅時に職員が客観的に復職可能な程度の状況にある場合、復職を拒否した場合は違法であり、職員は当然復職したものとみなされます。

 退職の場合、健康保険の傷病手当金は、退職後も受給日から1年6カ月までの期間、医師の証明だけで受給できます。
 また、雇用保険の基本手当も、疾病等であれば申請することによって受給期間を繰り延べすることもできるはずです。
 以上のことをよく説明して、それぞれの機関に相談するよう御指導ください。

○労働契約期間満了職員の取扱い

Q   当園では、1年更新で正職員と同一の待遇で職員を採用しています。更新をすでに数回重ねていますが、今回の更新日でこの職員に辞めていただきたいと考えています。この場合は解雇となるのか、あるいは、期間満了として契約を解除することになるのでしょうか。
A

労働契約の更新に関しては、「期間2カ月の臨時雇用契約が数回ないし20数回にわたって更新された場合において、契約は期間の定めのないものとして転移、単に期間満了というだけで終了させることはできない」と判示しています。

 また、「期間の定めのある労働契約において、期間が反復更新され、期間満了後にも使用者が雇用を継続すべきものと期待することに合理性が認められる場合には、使用者の更新拒絶は実質上の解雇と同視すべきであるから、右拒絶は信義則上許されないものと評価されるとき、又は不当労働行為と評価されるときは無効である。」とされています。

 一方、解雇に関しては「当事者の自由対等を前提とした市民法上の雇用契約における解雇の自由は、労働法原理によって規律される労働契約関係においては解釈上おのずから原理的修正を受け、解雇には合理的にみて首肯するに足る相当の理由の存在を必要とし、これのない解雇は許されない」としています。

 貴園の職員の雇い止めについては、前述の内容から考えて、期間満了による労働契約の拒絶とは言い難いと思います。この場合は、更新をしない方針であるならば、解雇予告は必要とされ、30日前に予告しなければなりません。
 また、解雇する場合には社会通念上、客観的に合理的理由がなければならないとされていますから、問題が生じないよう御本人とよく話し合って、了解を得る方法が賢明と思われます。

○試用期間中の職員の解雇

Q   当施設では就業規則で、試用期間を3カ月と定めていて、その期間満了後に本採用することにしています。今回試用期間中の職員は、勤務態度が芳しくなく他の職員との協調性にも欠けるので、本採用前に解雇したいと思いますが、この場合に30日前に解雇予告をする必要がありますか。
A

一般的に、試用期間とは、採用しようとする職員の勤務態度、能力、技能、人間性等の業務への適合性をみる期間で、それによって本採用の採否が確定する期間と言えます。
 使用者が、職員を解雇しようとする場合は、30日前までに解雇の予告をしなければなりません。予告しない場合は、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません。
 ただし、労働基準法では試用期間中の者には適用しないとしながらも、試用期間中の者を14日を超えて使用している場合には、解雇予告などの手続きが必要となります。
 一般的に、試用期間中の者の解雇については、通常の解雇よりも、広範な解雇権が留保されているようです。しかし、無制限に解雇が認められるわけではありません。
 試用期間とはいえ、勤務態度不良や協調性の欠如等の解雇理由が、社会通念上からみて客観的に合理的なものでなければなりません。むやみに解雇すれば解雇権の濫用となりかねませんので御注意ください。

○退職願いの撤回

Q   職員の一人が月の初頭に、今月末日をもって退職したいとして退職願を提出しましたので、口頭で了承したと伝えました。
 その後、月の半ばになり退職願の撤回の申し入れがありましたが、施設側はすでに代替えの職員の採用を決定していますので、退職願の撤回を拒否したいのですが、できるでしょうか。
A

退職は、職員の意思あるいは労使の合意に基づく労働契約の解約といえます。
 この労働契約の解約は、労基法の定めるものではなく、民法の適用となります。
 退職届の提出が、職員の一方的な雇用契約の解約の意思表示の場合は、相手方である施設の同意がなければ、内容の変更や退職届の撤回はできないと考えられます。
 一方、職員による退職届の提出が、施設側の了承を求めるものであると考えられる場合は、施設の同意があって退職の効力が生じますので、合意退職と言えます。この場合は、職員の退職に施設側が同意するまでの間であれば、退職の申し出の撤回や変更が可能と考えられますが、施設側がいったん退職に同意した場合には、職員から一方的に撤回又は変更することはできないと思われます。ましてや、職員の退職に施設側が口答で了承し、職員の採用を決定していますので、退職届の撤回は、施設にとって混乱を招くことになり、退職届の撤回を拒否できるものと考えます。

○賃金支給と就業規則

Q   次の2点について教えてください。
1 業務上の事故または疾病による休業期間、私傷病による欠勤又は休職期間に対する賃金の支給と就業規則の規定について。
2 上記と労災保険の休業補償給付及び健康保険の傷病手当の受給額と就業規則の規定の仕方について。
A

1 「業務上の事故又は疾病に起因して休業する場合には、その期間につき給与を支給する。又は労働基準法の災害補償の規定に基づき支給する。」等々の規定をしながら、労働者災害保険の適用を受け給付を請求している施設が見受けらますので、現実に即した規定が必要です。
 私傷病の欠勤、休職についても給与を支給するのであれば、健康保険の傷病手当金の給付は、その支給される給与金額の限度で支給されなくなります。やはり、現実に即した規定が必要です。

2 労災保険の休業補償は、災害発生日の月の前3か月の平均給与日額の60%で、事故発生日の翌日から3日の待機期間の後、労働に服することができなかった期間支給されます。そのほかに休業特別支給金(労働福祉事業として支給される)が、休業4日目から申請することによって、原則として1日に付き給付基礎日額の100分の20に相当する額が支給されます。
 私傷病によって労働に服することのできなかった期間については、待機期間3日以後の労働不能の期間について、医師の証明があれば標準報酬日額の3分の2の補償が得られます。

○給与規定の改定

Q   当施設は開業してから10年経過しています。収入に占める人件費の割合が大きく、このままではいずれ経営基盤が崩れる可能性がありますので、給与規定を改定し、給与を5%程度引き下げたいと考えています。
このような給与の引き下げは、法的に問題があるでしょうか。
A

貴施設では、給与既定(就業規則)を改定して給与の引き下げを実施したいとのことですが、このような場合、労働条件の不利益変更という問題が発生します。

 判例によれば「給与規定(就業規則)中労働条件の基準を定める部分は、個々の労働契約に対して直接的効力を有するものであるから、その変更は労働契約によるか又は労働契約の相手側たる労働者との合意によるものでない限り許されない」としています。
 また、「使用者は、就業規則(給与規定)を一方的に変更することによって生じる賃金計算方式の変更をすることはできない」としています。
 さらに、「新たな就業規則の作成または変更によって労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課すことは、原則的に許されないが、労働条件の集合的処理、特に統一かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者に対して、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことはできない」と判事しています。

 このことは、就業規則の不利益変更は、合理的理由があれば認められる場合もありますが、合理的理由がない限り、本人の同意が得られない限りできないことになります。
 経営基盤が崩れそうだから賃金を引き下げることが合理的理由になりえず、どうしても賃金引き下げを行う場合は、本人の同意が必要となります。本人の同意なしに賃金を引き下げれば、労働基準法に違反する可能性があります。

○職員の休職

Q   先般来、職員が勤務中に椎間板ヘルニアになり、労働者災害保険法の適用を受け加療をしていましたが、今回、勤務に服しましたところ、本人から労働に耐えられる状況ではないとの申告がありました。
当会としては休職扱いとしたいのですが、就業規則上に該当する項目がありません。どのように処置したらよいでしょうか。
A

この職員が勤務するにあたり、貴会では、担当医師の診断書あるいは許可書等で服務可能な状況の確認をしていますか。あるいは、貴会の指定医師による診断を受けさせてみて、その病状を確認する必要があると思います。いまだに治療上の延長上にある休業なのか、私的欠勤であるのかを判定しなければなりません。

 病状が固定し、これ以上の効果が期待できない状況なのか、医師の所見と食い違って自覚症状による苦痛なのか、現在の職務に復職することが困難であるのかにより、対応の仕方がそれぞれ違ってくると思います。

 労災事故治療が終わった後も、勤務不可能な状況だとして見通しのないまま、貴会で補償していくのでは大変です。負担が軽い勤務に配転するか、最悪の場合は、労災事故休業後30日までは解雇制限がありますが、その後は解雇も可能となります。状況に応じ、御検討されてはいかがでしょうか。

○職員の休職期間について

平成26年3月掲載

Q   当会では、就業規則に勤務年数に対応した休職期間を定めるとともに、休職事由が消滅し本人が職場復帰を申し出た場合であっても、当会の事情によって休職期間を延長することができる旨を謳(うた)っています。
1 うつ病で休職していた職員が、医師の診断書を添付して復職を申し出たのに対し、休職期間の延長を命ずることについて
2 うつ病が治癒したにもかかわらず、職場復帰を希望しない職員に対し休職期間を延長するという対応をとることについて

 上記2点に関する問題点を教えてください。
A

1 復職させるかどうか判断するのは基本的に使用者というのが原則ですが、病気が治癒したことを示す十分なエビデンスを添えて、定められた休職期間内に復職を申し出た職員に対して、引き続き休職を命じるのは、使用者の責に帰すべき事由による休業とされる恐れがあります。
 この場合、休業手当(平均賃金の100分の60以上)の支払いが必要になります。
*平均賃金=事由発生日以前3ヶ月間に支払われた賃金総額÷事由発生 以前3ヶ月間の総日数

2 休職の原因たるうつ病が治癒したにもかかわらず、復職を希望しないということは労働関係が成立しないということであり、そのまま退職扱いとしても問題はありませんが、貴会の温情により、当面退職扱いとしないということであれば、特に問題となることはありません。ただし、同様のケースで異なる扱いをするといったことがあれば、問題となることも想定されます。

3 最近増加しているうつ病による休職のようなケースでは、休職と復職を繰り返すといった事例も多いため、就業規則に定める休職期間の算定に関しては、期間の通算に関する規定を設けておくことが、後々のトラブル防止につながります。
 たとえば、「休職していた者が休職期間満了前に復職し、復職の日から○カ月以内に同一または類似の傷病により再度休職する場合は前後の期間を通算する」等です。

○欠勤と賃金支給

Q   当施設では、1カ月に遅刻を3回した場合は、1日欠勤したものとみなし、就業規則の定めにより、1日分の賃金を控除しています。
このような方法に問題があるでしょうか。
A

減給というのは、当該職員が現実に労働をしなかった時間に相当する賃金を、本来の労働賃金より控除することをいいます。したがって、遅刻や早退または欠勤に対する賃金からの控除は、現実に労働に服さなかった時間に相当する部分の控除であれば、問題がないと考えられます。
 しかし、現実に労働しない時間以上の時間まで控除することになれば、この超えた部分の金額は、減給の制裁となります。
 労基法(第91条)では、「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合は、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」としています。
 この条文について、3回のそれぞれに減給制裁をし、その結果1.5日分の減給制裁が可能だと解釈すれば、3回の減給制裁が1日分については問題ないようにも考えられます。しかし、1回ごとの遅刻等に減給制裁を行うことについては、制裁についての相当性の原則、即ち、制裁処分が具体的事実に対して客観的に合理的であり、かつ社会通念上相当なものでなければなりません。
 貴施設では、1か月に遅刻が3回あったために、初めて減給制裁を実施したようですので、一つの制裁事由となりますが、平均賃金の1日分の半分を超えてはなりません。従って、1日分の減給制裁は違法となります。

○振替休日と欠勤控除

平成28年3月掲載

Q   当法人では、就業規則に定めている振替休日の制度に則り、職員に対し休日の振替を命じましたが、出勤すべき元々休日であった日に当該職員が出勤しませんでした。本人は代わりに振替により新たに休日になった日に出勤するといっているのですが、その日は人手が足りているので、出勤しなかった日を欠勤控除扱いにしようと考えています。何か問題はあるでしょうか。
A

休日の振替とは、事前に休む日を特定して振り替え、当初の休日に労働させることですが、この場合、当初に休日は、通常の労働日に変更されるため、その日は休日労働とはなりません。

 従って、この日の欠勤、早退、遅刻等の不就労については、当然賃金控除の対象となりますので、御質問のケースにおける対応の仕方としては、ルールの適正な運用の観点から、次に上げるようなことが妥当であろうと思われます。

①1日分の欠勤控除をおこなう。
②あらかじめ指定した振替休日は予定どおり休ませる。

 なお、「とりあえず予定されていた休日に出勤させて、後で休みを指定する」といった対応であった場合は「代休」という扱いになりますので、この日に出勤した者に対しては、休日労働の割増賃金を支払わなくてはなりません。

 また、この日に欠勤した者は、「指定命令違反」とはなりますが、賃金控除の対象とはなりません。これは、「休日の振替」を事前に通知しない限り、労働を命じた日はあくまで休日であり、所定労働日に当たらないため、たとえこの日に欠勤したとしても、1日分の賃金をカットすることは認められないという解釈になるためです。

○年次有給休暇の取得

Q   年次有給休暇の取得について、職員から、遅刻や早退に対応できるよう半日単位で付与してほしい、との要請がありました。
どのように対処すべきでしょうか。
A

年次有給休暇は、本来的には労働者の休養のために付与されているものです。
 したがって、遅刻、早退に充当されるべきではないと考えられます。
 労基法では「使用者は、その雇用された日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は、分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」と規定しており、分割を認められる最低単位は1日と解され、半日または時間単位の分割は認められないと思います。
 判例等でも「年次有給休暇は、1労働日を単位とするものであるから、労働者から半日ずつの年次有給休暇の請求があっても、使用者は、労働者に半日単位で付与する義務はない」としています。
 ただし、日によって労働日が異なる場合、土曜日が半日等のときは、土曜日に年次有給休暇をとったとしても、当然ながら、1労働日の取得と考えられます。
 しかし、施設側がこのような土曜日の年休につき、これを半日消化として認め、土曜日の年次有給休暇2回で1労働日とみなすことは、結果として法を上回る日数の休暇を付与することになり可能と考えます。
 一般的には、年次有給休暇の取得を促進するため、半日単位の年次有給休暇を労働者がその取得を希望してその時季を指定し、これに使用者が同意した場合で、かつ、本来の取得方法による年次有給休暇取得の阻害とならない範囲内で運用する限り、差支えないとされています。

○年次有給休暇の繰越

平成26年3月掲載

Q   当会の再雇用規程では、定年(60歳)退職後引き続きパート職員として再雇用される場合、有給休暇は「パートタイマー就業規則」に基づいて付与されることとなり、従前の有給休暇の繰り越しはせず、リセットして新たに6カ月経過した時点で比例付与することとしていますが何か問題は有るでしょうか。
A

労基法では実質基準という考え方が採用されていますので、定年後6カ月以上の空白期間を置いてからの再雇用といった場合を除き、労働関係は継続しておりパートへの単なる身分変更がなされたものと解釈されます。
 従って、未消化分の年休に関して、定年をもってゼロにすることはできず2年間の消滅時効に係るまでは繰り越すことが必要になりますし、パート移行後の年休の算定に係わる継続勤務期間も元々の雇入れ日からのものとなります。
 また、パートへの移行後の1年目における算定期間では、定年前のフルタイムの期間とパートタイムの期間とが存在するといったことも想定されますが、各期間における所定労働日の合計の8割以上勤務した場合、雇入れ日からの通算勤務年数と1年間の所定労働日数に対応した日数の有給休暇を付与することが必要ということになります。(下記表参照)

(比例付与日数)

週所定労働日数 4日 3日 2日 1日
1年間の所定労働日数 169日から
216日
121日から
168日
73日から
120日
48日から
72日
雇入れ日から
起算した継続勤務期間
6カ月 7日 5日 3日 1日
1年6カ月 8日 6日 4日 2日
2年6カ月 9日 6日 4日 2日
3年6カ月 10日 8日 5日 2日
4年6カ月 12日 9日 6日 3日
5年6カ月 13日 10日 6日 3日
6年6カ月以上 15日 11日 7日 3日

○時間単位の年休(年次有給休暇)

平成23年3月掲載

Q   労働基準法が改正になり、年次有給休暇に時間単位で休暇を付与することができるようになったと聞いていますが、その概要を教えてください。
当事業所の所定労働時間は、7時間45分ですが、付与計算は7時間45分でよいでしょうか。
A

1 今回の改正で、年次有給休暇日数のうち5日を限度として、時間単位で休暇を与えることができるようになりました。

2 使用者は、当該事業所に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者と書面による協定により、
① 時間単位年次有給休暇を付与できる労働者の範囲
② 時間単位で与える年次有給休暇の日数(5日以内に限る)
③ 時間単位で与えることができる有給休暇の1日の時間数
④ 1時間単位以外の時間単位として有給休暇を与える場合は、その時間数
を締結する必要があります。

3 時間単位年次有給休暇は、計画的付与の対象とすることができません。

また、この制度を実施するには就業規則に規定する必要があります。

4 時間を単位として与えることのできる有給休暇1日の時間数は、1日の所定労働時間を下回らないこととされています。
このことは、所定労働時間が7時間の場合は7時間、7時間を超え8時間以内の場合は8時間、8時間の場合は8時間と考えられます。

5 貴所の所定労働時間は7時間45分とのことですが、時間単位で休暇を付与する場合は、8時間の休暇取得で1日分の年次有給休暇として計算され、15分は事業所側の負担となります。

○年次有給休暇と人事考課

Q   当施設の中には、法定年次有給休暇を有効に全部消化する者と、ほとんど消化せず勤務に励む職員とがいます。このような場合、人事考課の際にこの差を繰り込んで評価したいと思いますが、問題があるでしょうか。
A

労基法第39条は、所定の要件を満たし年次休暇を取得した者に対しては、使用者はこれを積極的に与えるよう努める義務があるとされ、労働者から具体的にその請求がない限り、使用者はこれを与える責務はないと解されています。したがって、年休の時季選択(指定)権は、原則として労働者に与えられています。

 また、使用者は、職員の健康維持や疲労回復のためにも年次有給休暇の消化に努力しなければならないとされています。
 「精勤手当や賞与の額の算定に際して、労働基準法第39条に規定する年次有給休暇を取得した日を欠勤として、又は欠勤に準じて取り扱うのは、年次有給休暇の取得を抑制する効果をもつものであり、労働基準法に反する」ものといえます。

 貴施設の場合は、年次有給休暇を取得しない職員に対して何らかの報酬を支給したいとのことですが、このことは、年次有給休暇の取得に対する抑制にもつながりかねません。場合によれば、年次有給休暇の買い取りを禁じている法律にも違反する可能性があります。
 なお、労基法第39条に定める法定日数を超えて与えられている休暇日数や特別休暇日数の部分の買い取りは、可能と考えられます。

○育児・介護休業及び看護休暇制度

平成30年3月一部改訂

Q   育児休業制度や介護休業制度を、パート職員など有期雇用契約者が利用する場合の要件等について、説明してください。
A

育児・介護休業法の改正(平成29年10月1日施行)により、有期雇用契約者の育児休業、介護休業の取得要件が緩和されました。

1 育児休業・介護休業の対象者

 次の要件をすべて満たす者は、適用対象となります。

 ①申し出の時点で、継続雇用期間が1年以上ある者
 ②子が1歳6ヶ月(一定の要件を満たす場合2歳)になるまでの間に、その労働契約が満了することが明らかでない者


2 子の看護休暇

 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する職員に対し、年間5日(その養育する子が2名以上の場合にあっては10労働日)を限度として、子の傷病の看護のための休暇(子の看護休暇)を付与することが義務付けられています。

 この場合、当該職員から要請があれば、所定労働時間が4時間以下の職員を除き、半日(所定労働時間の2分の1)単位で付与することが必要です。また、当該休暇の取得を申し出たこと、及び取得したことを理由とする不利益な取り扱いが禁じられています。

 ただし、看護休暇の付与に関し、労使協定で、継続雇用が6ヶ月未満の職員を適用除外とする旨の定めをした場合は、当該労使協定の定めによることとしても構わないこととなっています。

○介護休業の取得

平成30年3月一部改訂

Q   先日、当施設の職員の一人が、親の介護のために介護休業を取得したいと申し出てきました。この職員は結婚していて、その妻は専業主婦ですので、介護できる者がいることになります。このような場合でも、介護休業を与えなければならないでしょうか。

また、介護休業を与える場合に、要介護者の状況を把握するために、要介護対象者に関する書類等の提出を求めることができるでしょうか。
A

1 育児・介護休業法(以下「法」という)の一部改正について
(1)育児・介護休業法の一部が平成29年10月から改正され、期間雇用者について、適用条件が緩和されました。(法11①)

① 申し出の時点で、継続雇用期間が1年以上ある者
② 介護休業開始日から起算し93日を経過する日を超えて雇用が継続することが見込まれる者。ただし、申し出の時点で、介護休業開始後93日を経過する日から6ヶ月を経過する日までの間に雇用契約が終了することが明らかな者を除く。
 従って、次に該当する者以外の者は、すべて介護休業を取得することができることになりました。
A 日々雇用される者
B 期間雇用者のうち、上記②のただし書きに該当する者

(2)また、介護休暇等の回数等についても、要介護状態(注)にある同一の対象家族1人について通算して93日を限度に3回まで利用できるようになりました。(法11②)
なお、労働者が、この休業を2週間前までに書面をもって申し出た場合には、事業主は、その者に介護休暇を与えなければならない、としています。

(注)要介護状態とは、「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」(H16.12.28職発第1228001号・雇児発第1228002号)に規定されていますが、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を要する状態をいい、配偶者、父母、子及び同居していて扶養する祖父母、兄弟姉妹、孫等が対象になる。

2 貴施設の場合
 御質問についてですが、介護休業を取得できる職員の範囲は、1-(1)のA,Bに該当する職員以外については拒否できないことになりますので、配偶者が主婦であろうと、又は他に介護する者がいようと関係なく、与えなくてはなりません。
 また、要介護の状況把握のため必要な書類を求めることに関しては、育児・介護休業法施行規則第22条第2項において、「事業主は、要介護対象者の氏名及び続柄、対象家族が祖父母、兄弟姉妹、孫にあっては、同居や扶養の事実、要介護の状態にある事実等につき、その事実を証明することができる書類の提出を求めることができる」と規定されていますので、必要に応じ提出を求めてください。

○育児休業中の賃金と育児休業給付との調整

平成27年3月一部改訂

Q   当施設では、職員の定着を図る対策として、育児休業期間中に、せめて雇用保険の育児休業給付金を含めて出産手当金程度の金額となるよう賃金を支給したいと思っています。
この場合、賃金と育児休業給付金とは調整されるのでしょうか。
A

1 一般的に女性の場合、産前・産後の休暇の後、引き続き育児休業の取得となりますが、育児休業期間には、雇用保険から育児休業給付金が支給されます。

 また、育児休業給付額となる休業開始時賃金日額は、休業開始日直前の賃金締切日以前6カ月間の総支給額(通勤手当を含み、賞与は含まない)を180で除した額となり、休業開始時賃金月額は、その30日分の額となります。
 なお、休業開始時賃金月額には、厚生労働省令で定められた上限額及び下限額があり、毎年8月1日に改定されます。

2 育児休業期間に支給される育児休業給付金と賃金との調整は、賃金が、休業開始時賃金日額×支給日数の
① 13%(181日目からは30%)以下の場合⇒全額支給
② 13%(181目からは30%)を超え80%未満の場合
 ⇒賃金日額×支給日数の80%相当額と賃金との差額を支給
③ 80%以上の場合⇒不支給 となります。
したがって、休業基本給付金と賃金とを合わせて休業開始時賃金月額の80%を超えなければ、休業基本給付金と賃金の全額が受けられることになり、調整はありません。そして、80%を超える場合は、超えた金額が支給額から控除され、調整されることになります。
なお、育児休業給付金は、休業開始時賃金月額の50%(当分の間育児休業開始から180日までは67%)ですから、賃金が30%以内であるならば181日目からは、調整は行われません。

○傷病手当金と出産手当金との調整

Q   女性職員から、妊娠していて流産の可能性があるので安静にするよう医師の診断があったとして、診断書が提出され、また、年次有給休暇が20日以上あるので有給扱いにしてほしい、との申し出がありました。この場合、良い解決策があるであるでしょうか。
A

1 この職員は、出産について医師の診断を受け、安静を指示されています。妊娠や出産は基本的には病気ではありませんので、健康保険の適用はありませんが、妊娠中や出産時に異常があれば、病気として健康保険が適用される場合があります。また、病気として勤務できないのであれば、傷病手当金の給付が受けられます。
 なお、「勤務できない」とは、必ずしも医学的基準によらず、その被保険者の従事する業務に耐えられるか否かを標準として、社会通念に基づき保険者が認定するものとされています。

2 傷病手当金は、労務に服することができなくなった日から起算して連続して3日以上欠勤した場合に、4日目から支給されます。
 この職員の場合、待機期間の3日については、有給休暇で埋めて、それ以降は傷病手当の給付、健康保険の標準報酬日額の3分の2を請求することもできます。もちろん、有給休暇取得消化後に、傷病手当の請求もできます。

3 妊娠が安定せず、勤務できない状態が続き、産前の休暇である分娩前42日にまたがる場合は、出産手当金に切り替わります。
 傷病手当を受けていた者が出産手当を受けることになった場合は、出産手当金が優先し、その期間、傷病手当金が支給されません。また、出産手当金を受ける場合に傷病手当金を受けたときは、その傷病手当金は、出産手当金の内払いとみなされます。
 なお、傷病手当金、出産手当金とも、労務に服さなかった分を事業主が給与として支給する場合は、その1日当たりの額が、傷病手当、出産手当の1日当たり金額より多いときは支給されず、少ないときは、その差額が支給されます。

○深夜勤務手当の定額支給

平成27年3月掲載

Q   当施設では職員が夜間勤務(pm9:00〜翌am7:00、休憩120分)した時には、一夜につき夜勤手当6,000円を定額で支給することとなっています。
先日、夜勤に当たっていた介護士が入所者の介護のため夜勤の途中に取ることとなっている休憩時間をとることができないといった事態がありました。
この場合、実働9時間(深夜勤務7時間+超過勤務2時間)で割増賃金を計算しても所定の6,000円内に収まるはずなので、6,000円にさらに本来休憩時間であった2時間分を超過勤務として割増を上乗せするといった必要はないと思いますが、いかがでしょうか。
A

労基法第37条では超過勤務あるいは深夜(pm10:00〜am5:00)勤務させた場合、通常の労働時間の賃金の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払うことを規定しています。
 当然ながら、通常の賃金は個人個人によって異なっていますから、割増賃金の額も個人個人で異なってきますので、これを定額で支給することについては、ご質問のような疑問が生じる可能性があります。
 問題解消のためには、法令に沿ったかたちで実働時間に対応した割増賃金を支給するように規定自体を変更することが一番だと思います。どうしても定額で支給することにこだわるのであれば、その額が実働何時間分(うち深夜帯何時間分)に対応しているのかを予め明確化しその時間を超える実際の勤務が発生した場合には、その部分の実額を計算して追加支給するといった対応が必要となります。
 また、割増賃金の計算根拠となる算定基礎賃金の額が高く、所定時間による計算で既に定額を上回るといった場合は、その上回る額で支給するといった対応が必要となります。

○宿直職員の勤務

Q1   当施設は特養を経営しています。宿直職員に夜勤の職員と一緒におむつの交換を手伝ってもらっていましたが、労基署より宿直員にこのような仕事をさせてはいけないと、注意を受けましたがどうしてでしょうか。
Q2   関係行政機関に就業規則を提出したところ、宿直職員について、宿直規定の提出を指示されました。宿直の内容について教えてください。
A

施設における宿直は、非常事態発生時の連絡や入所者の病気怪我等による病院等への搬送の付き添いなどのための備えとして、夜間にわたり宿泊を要するものです。労基法施行規則で「宿直は断続的な業務」として所轄労基署長の許可を得た場合は、労基法の規定である1日8時間1週40時間の原則及び変形40時間制に拘わらず、職員を使用することができると規定しています。
 そして、この規定により許可された宿直については、他の断続労働と同様に、労働時間に関する規定のほか、休憩、休日に関する規定も適用されません。
 また、宿直職員については、定時的な施設内の巡視、電話の収受または非常事態に備えて待機するものを常態とし、ほとんど労働する必要のない勤務に限るとされています。
 もし、入所者に急病人や怪我人等の緊急事態が突発的に発生したりして、その職員が本来の業務に従事することになれば、その場合には、時間外労働や深夜の時間帯であれば、深夜手当の加算が必要となります。

○職員の配置換え

Q   当会に勤務する看護師の一人が看護師間で勤務について協調できず、他の看護師たちから配置換えか、他の施設に出向させてほしいとの要望が再三ありました。このため内部で検討して、関連する病院に出向させることにして、本人に速やかに出向するよう命じましたところ、不服として、一般労働組合に加入し、団交の申し入れがありました。どのように対応したらよいでしょうか。
A

出向について、貴会の就業規則上に規定しているとのことですが、就業規則上にその根拠規定を置くことにより、労働者に出向を命じうるとする見解はほとんどなく、更に、「たとえ労働協約において『出向に応ずる』旨の包括的同意が与えられていたとしても、その相手方が誰であるかは労働者にとっては重大な関心事であり、少なくとも出向先の特定については、労働者の個別的同意が必要である。」との説が有力です。

 また、出向は労働者の承諾がない限りその効力は生じない(大阪地52.21)、あるいは系列会社への出向には本人の同意を要する(東京地412.6.16)との判例があります。

 ユニオンとの団交は避けて通れませんから、上記のように、施設側が理由はともあれ、一方的に出向を命じれば無効となる可能性があります。施設側としては、このことをよく認識して、今までの経過をきちんと書類等に残し、施設の運営上緊急やむを得なかった措置としての出向であること、また、職員間の不調和が業務の遂行に及ぼす影響がいかに甚大であるかを証明することが必要です。
 また、本人に対しては、解雇でなく在籍出向の道を取ったものであり、近い将来復帰できる可能性を残していること等を真摯に説明し、話し合いのテーブルについては、いかがですか。

○私用メールの監視

Q   職員が、職場のパソコンを使って、メールのやり取りをしているようです。職務に専念させるため、今後、監視をしたいと思いますが、何か問題があるでしょうか
A

職場のパソコン・ネットワークは、法人の財産ですから、私的に使うことは、原則として許されません。また、勤務時間中に、私用のメールを送受信することは、労働契約上、職務専念義務違反になります。 
 また、施設の情報漏洩を防ぐためにも、メールの監視は必要なことです。

 しかし一方においては、家庭に緊急の連絡をする等、軽微な利用であって、法人にはほとんど損失がなく、社会通念上許容される私的利用もあります。

 監視の方法としては、職員に対する予告なしでメールをチェックする方法もありますが、今後の裁判において、プライバシーを侵害したと認定される可能性も十分にあります。

 したがって、私用メールのチェックは、法人内の規定を整備し、職員に事前告知をした上で実施することが妥当と思います。また、実施に際しては、どのような場合に、どのような方法で、誰が閲覧するのか等を規定しておくことも重要です。
 平常時には、特定人のメールチェックではなく、ソフト等による機械的モニタリングが好ましいでしょう。

○裁判員制度への対応

平成21年3月掲載

Q   裁判員制度が平成21年度から始まりますが、職員が裁判員に選任される場合の対応について準備したいと思います。どのように対処すべきでしょうか。
A

1 平成21年5月21日から裁判員制度が始まります。この制度は、国民から刑事事件ごとに選ばれた裁判員が裁判官と共に審理に参加する制度であり、平成21年7月下旬から開始される予定です。

2 「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」に使用者は、「労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したことその他裁判員、補充裁判員、専任予定裁判員若しくは裁判員候補者であること又はこれらの者であったことを理由として、解雇その他不利益な取り扱いをしてはならない」としています。

3 この条項は、労基法第7条「公民権行使の保障」と同一の意味と解され、裁判員制度に基づき取得する休暇は、年次有給休暇付与基準としての「全労働日の8割以上の出勤」としての全労働日に含めず算定することになります。
裁判員休暇の取り扱いについて、就業規則上の規定の方法としては、
① 裁判員休暇について新たに一条項追加する。
② すでに就業規則上に、特別休暇の条項があれば、裁判員休暇を追加する。
③ 就業規則上に、公民権の行使条項があれば、この条項で運用する。
等が考えられます。本人の請求により年次有給休暇でも可能と考えます。

4 裁判員として審理に参加すれば、裁判所から日当が支給されます。裁判員、補充裁判員として審理に参加した場合は1日1万円以内、裁判員候補として裁判所に出頭した場合は、1日8千円以内の日当が支給されます。
 裁判員休暇は、事業主にとっては直接業務に関係ありませんから、賃金の支給は任意になります。このことを踏まえて裁判員休暇を有給にするか、無給にするか、又は日当を控除した一部支給にするかを法人の身の丈に合わせ規定することになります。

○パート職員の社会保険加入

平成29年3月全部改訂

Q   パート職員の社会保険や雇用保険への加入要件は、どのようになっているのでしょうか。
A

パート職員に関し、平成28年10月1日から、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格の取得基準が明確になりました。

1 被保険者資格取得基準(4分の3基準)次のように明確化されました。

 1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が、常時雇用者の4分の3以上

2 被保険者資格取得の経過措置

 平成28年10月1日において、新たな4分の3基準を満たしていない場合であっても、施行日前から被保険者である職員は、引き続き同じ事業所に雇用されている間は被保険者となり、資格喪失届の提出は不要となっています。

3 特定適用事業所(同一事業主の適用事業所の被保険者数の合計が、1年で65月以上500人を超える見込みの事業所)の場合

 勤務時間・勤務日数が常時雇用者の4分の3未満で、以下の①〜⑤のすべてに該当する者は被保険者となります。

 ①週の所定労働時間が20時間以上
 ②雇用期間が1年以上の見込み
 ③賃金月額が8.8万円以上
 ④学生でないこと
 ⑤特定適用事業所に勤務

4 雇用保険に関しては変わらず、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用が見込まれる者については被保険者となります。なお、平成29年1月1日より新たに雇用された65歳以上の労働者についても「高年齢被保険者」として雇用保険の対象となりました。

○パート職員の有給休暇の賃金

Q  
当施設には、パートタイマーとして勤務する職員が多数いますが、この職員の勤務時間は、
① 1日の勤務時間が一定時間 
② 曜日によって勤務時間が異なる
③ そのつど勤務時間が異なるが、1週間の勤務時間はほぼ一定  の3種類となっています。
 このうち、②、③に該当する職員について、有給休暇中の賃金は、どのように支給したらよいのでしょうか。
A

年次有給休暇取得中の賃金は、
①平均賃金
②所定労働時間勤務した場合に支払われる通常の賃金
③健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額
のいずれかの金額で支払わなければなりません。(労基法39⑥)
 なお、①又は②の場合は、就業規則やこれに準じる規則で定めることを要し、③の場合は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は、労働者の過半数を代表する者との書面による協定が必要です。

2 パート職員
 パート職員の賃金の算定については、
① の場合は、有給休暇取得日から以前3か月におけるその労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額(労基法12)とされており、有給休暇をとるたびに算定します。
② の場合は、次に掲げるところによって算定した金額(労基法施行規則25)
とされています。
 ァ 時間によって定められた賃金 ⇒その金額にその日の所定労働時間数を乗じた金額
 ィ 日によって定められ賃金   ⇒その金額
 ゥ 週によって定められた賃金  ⇒その金額をその週の所定労働時間数で除した金額
 ェ 月によって定められた賃金  ⇒その金額をその月の所定労働時間で除した金額
 ォ 上記以外の一定の期間によって定められた賃金
          ⇒上記ァ〜ェに準じて算定した金額
 したがって、日によって所定労働時間が異なる場合は、有給休暇取得の申請があった当日の所定労働時間の賃金を支給することになり、所定労働時間が短い日に有給休暇を取得すれば、当然賃金も少なくなります。
 また、日によって所定労働時間が異なり、規則的ではないが1週間の労働時間が一定であれば、上記①〜②を準用して算定することになります。

○パート職員就業規則と労働者の意見

Q   当施設は、現在ほんの数人のパートしか雇用していませんので、雇用する際に雇用条件通知書をもって運用しています。今後は、パート職員の採用を積極的に進めたいと考え、パート職員就業規則を作成すべく準備中です。
パート職員就業規則の作成について、労働者の意見を聴取しなければならないとされていますが、この場合、パート職員代表者の意見を聴取すればよいのでしょうか。
A

労基法90条で、就業規則の作成または変更には、労働者の過半数で組織する労働組合の代表者、労働組合のない場合は、労働者の過半数を代表する労働者の意見を聴取しなければならない、と規定しています。そして、使用者は、この規定により届出をする場合、上記意見書を添付しなければなりません。
 この労働者代表の意見聴取について、労働組合が故意に意見を表明せず、又は、意見書の署名捺印を拒否するような場合は、意見を聴取したことが、客観的に証明できる限り、届出は受理されます。
 なお、組合の反対意見があっても、他の要件を具備する限り就業規則の効力に影響はありません。労基法90条は、労働組合との協議決定を要求するものではなく、労働組合の意見を聴けば、労基法違反にならないといわれています。
 しかし、就業規則の作成又は変更には、労働者側の意見を十分聴くことが望ましいことは、当然です。

○パート職員の雇用管理

Q   近々、パートタイム職員の雇用の扱いが変わるそうですが、どのように変わるのでしょうか。
A

平成20年4月1日から、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」の一部が改正施行されますが、その主な内容は、次のとおりです。

1 労働条件に関する文書の交付等(第6条)について
 短時間労働者を雇用したときは、労基法第15条及び同法施行規則第5条に定める労働条件の明示に加え、昇給、退職手当及び賞与の有無についても、文書等によって明示しなければなりません。
 なお、これらの事項が就業規則で定められているときは、就業規則の交付をもって代えることができます。
 また、昇給、退職手当及び賞与の支給基準や支給時期、勤続手当、精勤手当や奨励加給金等、所定休日以外の出勤の有無、等々については明示に努めることとなります。

2 通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止(第8条)について
 通常の労働者と同視すべき短時間労働者とは、
 ① 通常の労働者と職務内容が同じ者
 ② 通常の労働者と人材活用等が全雇用期間を通じて同じ者
 ③ 労働契約が、実質的に雇用の定めのない契約となっている者
 で、これら短時間労働者に対して、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない、としています。

3 賃金(第9条)について
 通常の労働者と同視すべき短時間労働者以外の短時間労働者の賃金について、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、職務の内容、職務の成果、意欲、経験等を勘案し、決定するよう努めることとなります。
4 教育訓練(第10条)
 通常の労働者に対して行う教育訓練のうち、通常の労働者の職務遂行に必要な能力を付与するものについては、通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対しても、当該教育訓練を実施することとなります。

5 福利厚生施設(第11条)について
 給食施設、休憩室、更衣室の利用については、短時間労働者に対しても、その機会を与えるように配慮しなければなりません。

6 通常の労働者への転換(第12条)について
 通常の労働者への転換を推進するため、次のいずれかの措置を講じなければなりません。
 ① 通常の労働者を募集する場合 
 募集内容(勤務場所、勤務時間、賃金等)を所内に掲示し、短時間労働者に周知すること
 ② 通常の労働者の配置を新たに行う場合
 短時間労働者が応募する機会を与えること
 ③一定の資格を有する短時間労働者に対し、通常の労働者への転換のための試験制度を設ける等の措置を講じること

7 待遇の決定に当たって考慮した事項の説明(第13条)について
 短時間労働者から、本人の待遇を決定するにあたって考慮した事項について上記1から6について説明を求められたときは、これを説明しなければなりません。また、就業規則の作成手続きについても、説明を求められたときは、説明しなければなりません。

○有償ボランティアと労働者性

平成24年3月掲載

Q   当施設利用者のために、報酬は低額でもよいから働きたいという方がおられるので、有償ボランティアとして謝礼金を支給したいと思いますが、問題はないでしょうか。勤務条件は、次のとおりです。
 *送迎就労支援車輛運転
 *週  3日(月、水、金)21時間
また、この場合、雇用保険や労災保険等の適用は、ありますか。
A

1 ボランティアとは、一般に「金銭的対価がなく、法的義務付けもなく、当人の家族以外の者のために提供される仕事」とされています。

 近年、一般的な有償ボランティアの労働者性について議論はありますが、現行労働法上で有償ボランティアの労働者性が判断されたことはないようです。
 その理由として、通常の民間企業の雇用とかなり異なっていること、そして、ボランティア本来が持つ、内発的な動機から労働者と判断しがたい側面があると指摘されています。

2 一方、労基法では、労働者とは職業の種類を問わず、事業又は事業所に使用される者で、賃金を支払われる者をいうと規定されています。基本的には、「労働形態の提供が指揮監督下の労働であるか」及び「報酬が労務に対する対償性を有するか」によるものとされています。

3 御質問の内容からは、謝礼金額やボランティア従事期間等詳細がわかりませんが、一般論として、使用者と労働者としての雇用関係があるのではないかと考えられます。従って、この場合は短期間就労者として、労働条件の契約や最低賃金など労働諸法令が適用されると思いますので、上記内容を参考に検討して下さい。

○ボランティア関係者が引き起こした傷害の責任

平成24年3月掲載

Q   市町村の社会福祉協議会ですが、公民館で福祉バザーを開催しました。終わって後片付けをしていたときに、小学生(1~2年生らしい)が台車で遊んでいて、ボランティアの方に怪我を負わせてしまいました。その児童は、やはりボランティアで来られていた方のお子さんである可能性がありますが、特定できていません。怪我をされた方が、慰謝料を請求してきましたが、当社協に責任がありますか。
また、犯人を捜す努力が足りないので、刑事告訴することも考えているとのことです。
A

小学生には民事上の責任能力がなく、親が一次的な監督責任を負います。(監督義務を尽くしていたことを立証できた場合にのみ、賠償責任を逃れることができます。)ただし、本件では、行為者の特定ができていません。
 そこで、社協の責任ですが、本件では遊んでいる小学生に対して、関係者がいったん、注意をした後に事故が生じたことからすると、主催者として会場を管理していた社協の職員が、小学生の行動を制止すべきであったのに、制止できなかったとして、過失が認められる可能性があります。そこで、再度、現場の状況を見ていた方を中心に事故原因調査を行った上で、治療費を主体とした御見舞金による解決を考えられたらいかがでしょうか。
 なお、刑事告訴の件ですが、14歳未満の児童には刑事責任能力がないので、最終的に処罰されることはありません、しかし、せっかくのボランティア活動に参加して警察沙汰になってしまうのは残念なことですので、前記御見舞金による解決に努力してみてください。

○健康保険の被扶養者の認定

Q   女性職員から健康保険の被扶養者について相談があり、その概要は、
・この女性職員の夫は、普通の会社に勤めるサラリーマンで、夫婦には二人の小学生の子供がいる。
・現在二人の子供は、夫の健康保険の被扶養者になっている。
・子供の一人をこの女性職員の被扶養者にできないか。
とのことでした。
 聞くところによれば、夫婦共同扶養の場合は、主として生計を維持する者の被扶養者となる、とのことですが、もう少し詳しく教えてください。
A

1 夫婦が共に収入がある場合における被扶養者認定は、家計の実態、社会通念等を総合的に勘案して定めることが必要であり、普通つぎのように扱われています。
 ① 被扶養者とすべき者の人数にかかわらず、年間収入の多い者の被扶養者とすることが原則です。
 ② 夫婦ともに年収が同程度であるときは、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とします。
 ③ 前記①②の取扱いにつき、被用者保険関係保険者(健康保険組合等)等に異議があるときは、とりあえず、年収の多い者の被扶養者とし、その後に関係保険者間における協議に基づき、いずれの者の被扶養者とすべきか決定されます。なお、この協議によって行われた被扶養者の認定は、将来に向かってのみ有効であるとされます。

2 ちなみに、協会けんぽ間では、上記の原則に従うも、年収の少ない者の被扶養者とする届出がある場合でも、この届出の趣旨を踏まえ、この家計の実態に照らし、主としてこの者が生計維持をしていると認められるときは、被扶養者として差し支えないとしています。(平成16.6.17庁保険発0617001号)
 しかし、現在では、健康保険証がカード方式ですから、どちらの被扶養者になっても、特別の事情がない限り、保険料の負担や不便はないものと思われます。

○103万円と130万円について

Q   給与(所得税)計算における扶養対象配偶者の所得範囲は、年間103万円以下であり、一方、健康保険の被扶養者や国民年金3号被保険者の資格としての年間収入は、130万円以下といわれていますが、どのような違いがあるのでしょうか。
A

1 給与所得の場合
 給与所得の場合は、所得税法上、給与所得控除という制度があり、最低65万円を給与収入から控除することができます。さらに、課税面では、誰でも収入から控除することができる基礎控除38万円があり、この合計額が103万円で非課税限度となります。
 したがって、所得税法上非課税となる通勤費等を除き、現物給付等の給与とみなされる金額を含めた金額が、年間103万円以下であれば、控除対象配偶者となります。

 2社会保険の場合
 社会保険の場合は、被扶養者として認定する場合の年収を130万円未満(障害者や60歳以上は180万円未満)とし、被扶養者として認定を受ける時点での収入(日額・月額)を年間収入に換算(実績ではなく、あくまでも将来に向けての収入の見込み)して判断されます。
 収入は、通勤費を含む給与の総額、雇用保険の基本手当額(少額の場合は、基本日額に360を乗じて得た額)、遺族年金額等、不動産収入など(退職金や相続による一時的な収入は含まない)で、これらの合計額が、130万円未満であれば、被扶養者とされます。
 また、被保険者の配偶者が、健康保険の被扶養者に認定されれば、国民年金の第3号被保険者となります。

 3 103万円と130万円について(まとめ)
 以上のように、
 ① 「103万円」は、所得税法における給与所得の非課税限度額で、扶養対象配偶者となるための限界金額であり、
 ② 「130万円(障害者や60歳以上は180万円)」は、ほとんどの収入を合算して、社会保険の被扶養者を認定する際の基準といえます。

○出産育児一時金の医療機関等への直接支払

平成22年3月掲載

Q   今回の法改正で、被保険者やその被扶養者が出産した場合の出産一時金が、直接病院等に支給されることになったと聞きましたが、この件について説明してください。
A

被保険者や被扶養者が出産した場合、その出産が正常なときは、病気とみなされませんので、健康診断や出産費用は、自己負担となります。
 一方、異常分娩のときは健康保険が適用され、療養の給付が受けられます。

 被保険者やその被扶養者が出産した場合、出産育児一時金(家族出産一時金を含む)が支給されます。支給金額は、産科医療補償制度に加入する医療機関等で出産した場合は、1児について42万円、それ以外のときは39万円となります。多生児を出産したときは、胎児数分だけ受給できます。

 この出産育児一時金は、協会けんぽから医療機関等に直接支払われる、直接支払制度に改正されましたので、原則として多額の出産費用の準備が不要となりました。ただし、当分の間、直接支払制度が猶予されていますので、念のため、直接医療機関等に問い合わせておけば安心です。

 出産にかかった費用が出産育児一時金の受給額の範囲内であれば、出産後にその差額を協会けんぽに請求し、不足のときは、不足分を医療機関等に支払うことになります。

 従前のとおり、出産費用を自分で支払い、その上で出産育児一時金を請求することも可能です。

○過払い金(手当)の返還請求

Q   経理上の手違いから、職員の扶養家族であった子供が成人に達していたにもかかわらず、1年以上にわたり家族手当を支給していたことが判明しました。 
ついては、過払い額を、月々の賃金から相殺して全額返還してもらいたいと考えていますが、このような措置は法的に問題ないでしょうか。
A

1 賃金の債権は、民法上では「月又はこれより短き時間を以て定めたる雇人の給料」については、1年の短期消滅時効が定められていますが、労働者にとっては、重要な生活資源である賃金債権の時効が、1年ではその保護に欠ける恐れがあることから、労働基準法第115条で賃金等の請求権については、その消滅時効を2年間(退職手当を除く)としています。これにより、賃金債権、災害補償請求権や休業手当請求権、有給休暇の賃金請求権は、2年間の短期消滅時効となります。

2 以上のことから、事業主に支払義務がなく、職員は受け取る権利のない賃金を受領したことになりますので、施設側は職員に対して過払い分の賃金を請求する権利があることになります。しかし、相談内容から推察すると、施設側の過失によって過払いになったようですので、職員本人とよく話し合って、職員の経済生活を脅かさないような方法で、返還を求めるべきですし、施設側の過失に対しても考慮する必要があると考えられます。

3 相殺については、労基法第24条賃金の全額払いの原則との関連で問題があります。この点について、判例では、
「適正な賃金の額を支払うための手段たる相殺は、・・・その行使の時期、方法、金額等から見て労働者の経済生活の安定との関係上不当と認められないものであれば・・・禁止するところではないと解され、過払いのあった時期と賃金の清算調整の事実が判然としているような合理的に接近した時期において処理され、また、あらかじめ労働者に予告されるとか、その金額が多額にわたらないとか、経済生活の安定を脅かす恐れのない場合」に認められる、としています。

4 以上のことから、過払い分の賃金を相殺して支払うことは可能ですが、全額を相殺することには疑問が残ります。

○役員の雇用保険・労災保険への加入

Q   当会では、常務理事が、雇用保険、労災保険に加入していましたが、今般、労働関係の調査があり、役員は被保険者になれないとの理由で、加入できないことになりました。役員が加入する方法はないでしょうか。
A

1 雇用保険について
 役員が雇用保険の被保険者となるのは、部長、施設長等、被雇用者としての身分を有し、報酬支払、勤務実態、就業規則の適用状況から判断して、労働者的要素が強く、雇用関係が明確な場合です。
 なお、この場合、「兼務役員雇用保険被保険者確認願」及び「兼務役員における証明書」を公共職業安定所に提出しなければなりません。

2 労災保険について
 役員が労災保険の被保険者となれるのは、役員の指揮監督を受けて労働に従事し、一般労働者と同一条件で支払われる賃金を得ている場合です。
 貴会の常務理事は、業務執行役員と認定され、被保険者の資格を喪失したものと思います。

3 労災保険への特別加入制度について
 執行役員が労災保険加入を希望する場合は、労働保険事務組合に、施設の労働保険事務手続きを委託することにより、特別加入する制度があります。
 なお、特別加入できる事業主は、常時300人以下の労働者を雇用する場合です。特別加入を検討される場合は、最寄りの労基署にご相談ください。

(参考)
特別加入の場合の保険料は、一般労働者と異なり、省令による給付日額を選定して納付します。
また、業務上災害や通勤災害の補償は、一般労働者の勤務時間と同一範囲に限られ、役員の職務に係る補償はありません。

○労災保険の業務災害と通勤災害

Q   今般、仕事の都合上、職員の配置にやりくりがつかず、年次有給休暇取得中の職員に急きょ出勤を要請しました。この職員は要請に応じ、自家用車を運転し、現地から施設に向かいましたが、交通事故により負傷しました。
この場合、労災保険の業務災害又は通勤災害に該当するでしょうか。
A

労災保険でいう「業務上の傷病、障害、死亡等」とは、事業主の支配下にある状態が原因となって発生した傷病、障害、死亡等をいいます。
 業務上の認定基準は、「業務遂行性」と「業務起因性」で判断されます。
1 業務遂行性は、次のいずれかに該当する場合をいいます。
 ① 事業場の施設内で業務に従事している場合
 ② 事業場の施設外で業務に従事している場合。
 ③ 業務には従事していないが、事業場の施設内にいる場合

2 業務起因性は、傷病の原因となった災害が、労働者の業務に通常付随するものと認められる場合や、事業場の施設の状況に原因があると認められる場合をいいます。

3 通勤災害は、労働者が就業に関し、住居と就業の場との間を合理的な経路及び方法で往復することをいい、労務の性質を有するものを除くとしています。

4 今回の事故は、有給休暇中に施設の上司の連絡を受け、出勤することに同意したわけですから、この時点で有給休暇が取り消され、事業主の支配下にあると考えられます。

突発的事故等で、使用者の特命により、休日出勤、休暇取り消しの業務命令に基づく出勤途上の事故は、出張途上の事故に準じて業務上の災害と考えるのが妥当です。(24.1.19基収3375)

○複数事業所間勤務の通勤災害

Q   当施設のパート職員の中には、数時間勤務で他の事業所のパートと掛けもちの者もいます。今般、労災保険法が改正され、複数事業者間の通勤についても労災保険が適用されるそうですが、どのような内容でしょうか。
A

1 労災保険法の改正により、平成18年4月から複数事業所間の通勤途上の事故に対しても、労災保険が適用されることになりました。
(1) 具体的には、次の場合も、通勤の範囲として扱われます。 
 ① 厚生労働省令(以下「省令」という)で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
 ② 住所と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動(省令で定める要件に該当するものに限る)
(2) 省令で定める就業の場所については、労災保険法施行規則第6条において、次のとおりとされ、要件や考え方は従前と同様です。
 ① 労災保険の適用事業所に係る就業の場所
 ② 労災保険特別加入者に係る就業の場所
 ③ その他上記①又は②に類する場所

2 なお、複数事業所間で通勤災害が発生した場合、兼業禁止規定の有無により、事業所間において次のような問題が起こる場合がありますので、留意してください。
 ① 兼業が承認されている事業所にあっては、懲戒は起きませんが、通勤災害事業所以外の事業所では、この災害は私傷病であって、懲戒対象となりうること
 ② 兼業が禁止されている事業所にあっては、違反露見により、就業規則に基づく処分の対象となることがありうること

○健康保険を利用して交通事故の治療をする場合

Q   当施設の職員が、自家用車で帰宅途中に追突され、本人と加害者側双方が負傷しました。本人からの事故報告によれば、加害者から保険会社経由で「健康保険で治療してほしい」旨の話があったとのことです。どのような手続きが必要でしょうか。
A

1 本来であれば、自動車賠償保険で補償されるべきでしょうが、多分、加害者が任意保険に加入しておらず、強制賠償保険にしか加入していないため、強制賠償保険の医療費限度額を超えることを危惧しての対応かと思われます。

2 自動車事故で健康保険を使用して治療をする場合は、全国健康保険協会千葉支部へ、次の書類の提出が必要です。
 ① 交通事故(第三者行為)による傷病届
 ② 事故発生状況報告書 
 ③ 念書
 ④ 人身事故証明書入手不能理由書(事故証明書が人身事故扱いの場合は不要)
 ⑤ 交通事故証明書

3 第三者行為による怪我の治療は、加害者が負担するものとされています。したがって、健康保険で治療を受けることは、健康保険が一時立て替える形式をとることになります。その上で、被害者(健康保険被保険者)が加害者に対して有する損害賠償請求権を肩代わりし、健康保険負担分を加害者に請求して回収することになります。実際には、加害者が加入している損害保険会社(自賠責や任意保険)へ直接請求することが多いようです。無保険の場合や治療費の支払い限度を超える場合は、加害者本人に請求することがあるといわれています。
 なお、損害保険会社に請求して支払いを受ける賠償額は、被害者の過失割合により決められます。
 健康保険による第三者への賠償請求範囲は、保険給付範囲だけですので、それ以外の諸費用等は、直接加害者に請求する必要があります。

○職員の自家用車での事故

平成24年3月掲載

Q   職員には、自家用車での車通勤を認め、稀に、その自家用車で仕事をしてもらうことがありますが、交通事故となった場合の責任問題はどうなりますか。
A

いくつかの問題がありますので、整理して考えてみましょう。
(1)仕事中の事故で第三者に被害を与えた場合について
 職員が業務中に起こした過失事故について、法人は全責任を負います。(民法715条の使用者責任)
 人身事故については、運転者に過失があったことが推定されますので(自動車責任賠償法)、ほとんどの場合、法人が責任を負うことになります。
 そもそも職員の自家用車で業務を行わせること自体が問題ですが、自宅直帰をしたい等の希望が職員にあり、これを認めるのは、適切な任意保険に加入していることが確認できる場合に限られるべきです。

(2)通勤途中の事故について
 職員が通勤にのみ使っている自家用車が、通勤途中に事故を起こした場合、仕事中の事故とは言えないので、前記の使用者責任は発生しません。
 ただし、自動車責任賠償法で、「車の運行を支配しているもの、運行によって利益を得ているもの」については、運行供用者としての賠償責任が定められています。
 施設が駐車場を用意しているとか、通勤手当(ガソリン手当)を出しているということがあっても、施設が職員に対して、特に車の利用を積極的に奨励しているという事情がない限り、雇用主の運行供用者責任を否定するのが判例の流れです。しかし、中には月額5,000円の通勤手当を支給していることから、マイカー通勤を積極的に容認しているとして、雇用主の責任を認めた判例があり、判断には微妙な面があります。
 そこで、施設内駐車場の使用を認めるとか、ガソリン手当を出すなど、職員の車通勤に何らかの便宜を与える場合には、任意保険の加入を条件としておくことが適当です。

(3)職員の車の修理代について
 職員が自家用車で業務遂行中に自損事故を起こした場合に、その職員が法人に対して、車輛の損害について請求することがありえます。職員が自家用車を業務に使用していることを法人が知っている場合には、法人と職員との間で何らかの契約があると考えられ、その解釈が問題となります。
 職員が、法人の車を運転中にその過失で人身・物損事故を起こした場合、その職員は法人に対しても損害を与えることになりますが、法人から職員への求償については、一部しか認められないのが判例の立場です。職員が業務に従事することで法人はそれなりの利益を得ているのですから、その業務に起因する損害については、職員に過失があったとしても、その多くについては法人が負担するのが公平だと考えられるからです。それとの対比からすると、職員が自家用車を使用していた場合に、その損害の相当部分について法人が負担するということには合理性があり、そのような黙示の契約があったと考えることが可能です。
 したがって、話し合いによって車の損害の一部を法人が負担することも考える必要があります。実際には、事前に任意保険に加入してもらっておき、保険料の増額分を負担する等の方策も考えられます。

○衛生管理者の選任

Q   当施設は、現在の職員数が50名弱ですが、近々職員の増員を考えています。職員が50名以上となった場合には、衛生管理者を選任しなければならないと聞きました。衛生管理者に選任される者は、国家資格等をもっていなければなりませんか。
A

1 衛生管理者は、業種の如何を問わず、常時50名以上の労働者を雇用する事業所ごとに選任することが義務づけられています。そして、衛生管理者は、衛生管理者免許を受けた人、その他一定の資格を持っている常勤職員を選任し、その人に衛生に関する技術的事項を管理させなければなりません。

2 衛生管理者免許は、第1種衛生管理者免許と第2種衛生管理者免許とに分けられますが、医療業については、第1種衛生管理者免許又は衛生工学衛生管理者免許がある人、又は医師・歯科医師等となっています。

3 選任の次期は、労働者が50名以上になった日から14日以内に選任しなければなりません。

4 第1種衛生管理者の受験資格
 ① 学校教育法による大学又は高等専門学校を卒業した者で、その後1年以上労働衛生の実務に従事した経験のある者
 ② 学校教育法による高等学校又は中等教育学校を卒業した者で、その後3年以上労働衛生の実務に従事した経験のある者
 ③ 船員法第82条の2第3項の衛生管理者選任証書の交付を受けた者で、その後1年以上労働衛生の実務に従事した経験のある者

5 試験科目
 労働衛生  労働生理  関係法令

6 その他
 詳細は、労働基準監督署に照会してください。

○職員の健康診断

Q   ある会合に出席した際に、職員の健康診断が話題になりました。当施設は、1年に1回健康診断を実施していますが、深く考えたことがありませんでした。 健康診断の実施について、教えてください。
A

1 労働安全衛生法第66条において、事業者は、労働者に対し、厚生労働省令の定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならないとし、労働者には、この定期健康診断の受診を義務付けています。なお、この健康診断を受けない場合は、他の医師等の同一内容の健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業主に提出することになっています。
2 労働安全衛生規則(厚生労働省令)第44条及び第45条において、事業者は、常時使用する労働者に対し、1年以内ごと(深夜業を含む業務については6カ月以内ごと)に1回、定期的に、次の項目について、医師による健康診断を行なわなければならないとしています。

① 既往歴 業務歴 ⑦ 肝機能
② 自覚症状、他覚症状の有無 ⑧ 血中脂質
③ 身長、体重、視力、聴力、腹囲 ⑨ 血糖値
④ 胸部X線 喀痰検査 ⑩ 尿
⑤ 血圧 ⑪ 心電図
⑥ 貧血  

 また、労働安全衛生規則第47条では、事業者は、事業に付随する食堂又は炊事場に従事する労働者に、「検便」を義務付けています。
3 定期健康診断は、事業者に実施義務を課していますから、その経費は当然事業者が負担します。
 なお、定期健康診断と区別される、一般健康診断の場合は、その実施が義務付けられていません。その費用については、労使の協議によることとなりますが、その性質から、事業者負担が望ましいとされています。

○メンタルヘルスケア

Q   最近、メンタルヘルスが話題となり、企業責任を問われるケースも生じているようですが、施設として、労務管理上どのように対処すべきでしょうか。
A

1 近年、企業の安全衛生に対する責任は、幅広く、かつ重くなっており、行政、刑事、民事の分野にまで広がっています。また、従来、「安全配慮義務」といわれていたものが、「健康保持義務」に変わりました。
 メンタルヘルスは、日常的に従業員に対して、教育し、準備しておくことが必要です。以下、厚生労働省が平成18年3月に公示3号で「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を発表していますので、概要を説明します。

2 労働者の心の健康の保持増進のための指針 (概要)
 この指針は、労働安全衛生法(以下「法」という)第70条の2第1項及び同法第69条第1項の規定に基づき、労働者の心の健康の保持増進(以下「メンタルヘルス」という)の原則的な実施を定めたもので、
(1)事業者は、事業所におけるメンタルヘルスを積極的に推進するため、法に基づく衛生委員会において十分調査審議を行い、心の健康づくり計画を策定します。

(2)その実施に当たっては、関係者に対する教育研修、情報提供を行いますが、
 次の4点が重要とされています。
 ① セルフケア(安全衛生教育で自己管理)
 ② ラインによるケア(監督者・職長の教育による部下の健康管理)
 ③ 事業場内スタッフによるケア(産業医の活用)
 ④ 事業場外資源によるケア(地域産業保健センター等)

(3)その他の留意点
 ・メンタルヘルスを推進するため、事務所内に、メンタルヘルス推進者を選任するよう努めること
 ・必要に応じて、事業場外の医療機関等とネットワークを整備すること
 注 詳細は、ホームページ等で御確認ください。

○ストレスチェックの進め方

平成28年3月掲載

Q   労働安全衛生法の改正により、平成27年12月から50人以上の規模の事業所では、毎年1回すべての労働者(契約期間1年未満、短時間労働者を除く)に対し、ストレスチェックを実施することになりましたが、具体的な進め方について教えてください。
A

1 ストレスチェックは、近年急増している「うつ」等のメンタルヘルス不調を未然に防止するための仕組みとして、労働者が50人以上の事業所に対して、平成27年12月から毎年1回、各人のストレスがどのような状態にあるのかを調べることを義務付けた検査のことです。

2 進め方としては、まず、
 ①誰に実施させるのか
 ②いつ実施するのか
 ③どんな質問票を使うのか
 ④どんな方法でストレスの高い人を選ぶのか、
等々を事業所内ルールとして明文化し、すべての労働者に周知することが必要になります。
 この場合、①の実施者は、医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士の中から選ぶ必要があり、外部委託も可能です。
 また、③の質問票については、aストレスの原因、b心身の自覚症状、c労働者に対する周囲のサポートといった質問項目があれば任意の質問票で構わないとされており、厚労省のHPからダウンロードできるようになっています。

3 次に、回収された質問票をもとに、医師等の実施者がストレスの程度を評価し、医師の面接指導を要する者を選び、その旨を直接本人に通知します。
その結果、「医師による面接指導が必要」とされた労働者から申し出があった場合は、医師に依頼して面接指導を実施することになります。

4 事業主は、面接指導を実施した医師から、就業上の措置の有無とその内容について意見を聴き、それを踏まえて、労働時間の短縮など措置をとることになります。面接指導の結果を理由として、解雇、雇止め、退職勧奨、不当な動機・目的による配置転換・職位の変更等を行うことは禁止されています。

第3章
会計・税務


本稿において「会計基準」または「新会計基準」とは平成23年7月23日厚労省局長通知による会計基準をいう。

○福祉事業運営の総合的な評価

平成27年3月一部改訂

Q   社会福祉法人が、その事業を運営して行くうえで、参考になるような総合的な評価の基準数値、または指標といったものは、考えられないでしょうか。
A

1 会計基準では、一般企業の損益計算の考え方を取り入れて、これまでとは違った事業活動計算書を作成することになりましたが、この目的は、事業活動の成果を正しくつかむことにあります。そこで、決算ごとに算出されたそれぞれの科目の数値を利用して経営指標を作成し、経営の適否を判断したり、今後の事業計画の立案や目安にすることが考えられます。

2 しかし、社会福祉事業は、同種の事業であっても、利用定員や施設規模・実際の事業内容・運営方針等によって実態が大きく異なりますから、一律に他の法人との単純な比較や複数のデータを平均化した標準指標をもって評価することは適切ではありません。このような外部的な指標ではなく、法人の毎期の決算数字を比較して、その推移を観察する内部的な趨勢(すうせい)分析の方法を採用した方が有効でしょう。
 たとえば、人件費と基礎的な事業収入との比率や減価償却費等の比率等、さまざまな組合せの比率を作成し、その年々の変化を検討することにより人件費等管理上の指針にすることなどです。

3 一般の企業では、収益性が重視されるため、利益率の検討が中心となりますが、剰余金を生み出すことが事業目的ではない社会福祉法人では、限られた収入源のもとで収支のバランスと経費間のバランスを保ち、質の高い福祉サービスを生み出すことが求められます。福祉サービスの提供は、労働集約性の高い事業ですから、人件費の関連経費が分析の主な対象となりますが、収入や支出項目の増減率をつかむことも大切です。
 例 収入額に対する人件費、各経費、剰余金等の割合や増減率の推移など。

4 指標の作成は、決算数字を分子と分母に当てはめて、目的とする実態にあった割合の数値(比率)を算出します。この場合、財務諸表から、目的に適合した数値を適宜選択します。適切な比率を事業運営の参考として有効に活用することにより、経営全体のバランスを整え、ムダ、ムリ、ムラの排除に役立てることが期待できます。

○法人本部への資金の繰入れ

平成30年3月一部改訂

Q   本部経費に充当するため、他のサービス区分からの資金の繰入れは、できるでしょうか。
A

1 介護保険施設の場合
施設報酬を主たる財源とする資金の繰入れについては、健全な施設運営を確保する観点から、当該指定介護老人福祉施設の事業活動資金収支差額に資金残高が生じ、かつ、当期資金収支差額合計に資金不足が生じない範囲内において、他の社会福祉事業等又は公益事業へ資金を繰入れても差し支えないものとされています。
(平成12.3.10 老発第188号第2-3-(1) 一部改正平成26.6.30)
したがって、この範囲内で、施設サービス区分から本部サービス区分に繰入れても、差支えないと考えられます。
なお、高額な役員報酬など、実質的に剰余金の配当と認められる経費には、施設報酬を充てることはできません。
(平成12.3.10 老発第188号第2-3-(4))

2 指定障害者支援施設等の場合
自立支援給付費を主たる財源とする資金の繰入れについては、健全な施設運営を確保する観点から、当該指定障害者支援施設等の経常活動資金収支差額に資金残高が生じ、かつ、当期資金収支差額合計に資金不足が生じない範囲内において、他の社会福祉事業又は公益事業へ資金を繰入れても差し支えないものとされています。
なお、当該法人が行う当該指定障害者支援施設等以外の指定障害者支援施設等への資金の繰入れについては、当期末支払資金残高に資金不足が生じない範囲において、資金を繰入れても、差支えないものとされています。
(平成18.10.18 障発第1018003号3-(1) 一部改正平成19.3.30)

○減価償却制度の導入

平成27年3月一部改訂

Q   会計基準で減価償却制度が導入されましたが、法人決算に与える影響はどのようなものでしょうか。
A

1 法人税納入義務のない社会福祉法人では、減価償却を行っても一般の営利法人のような節税や資金留保の効果はありませんが、時の経過とともに生ずる資産価値の減少額を計算して、現在価格を確定すると同時に、償却資産の毎年の利用コストを事業コストに加えることにより、事業活動の成果を正しくつかむことができます。

2 国庫補助金等の公的な補助で取得した償却資産は、毎年の減価償却と同時に、それに対応する国庫補助金等特別積立金を取り崩して収入に計上し、減価償却費を相殺して実質的な法人の償却負担を軽減することになっています。したがって、積立金の計上が少ないと減価償却費の法人のコスト負担は、その少ない分だけ増加し、繰越活動収支差額は減少します。

3 新基準に移行する際には、過去にさかのぼって減価償却計算や国庫補助金等特別積立金の取崩し計算等を行う必要があり、繁雑な移行計算が必要になっています。

4 減価償却は、資金の収支に関係のない内部取引のため、資金収支計算書に計上されず、資金収支の増減には関係しません。

5 繰越活動増減差額と期末支払資金残高に余裕があるとき、増減差額の一部をその他の積立金として設定することは任意にできます。その場合は、同時に同額の積立資産を「その他の固定資産」として設定することになります。

○減価償却に伴う会計処理

平成27年3月一部改訂

Q   固定資産の減価償却のための必要項目と、それに伴う会計処理には、どのようなものがありますか。
A

1 減価償却費の計算の基礎となるものは、償却計算の方法、固定資産の種類と取得原価、耐用年数の見積もり、残存価格の設定です。償却計算の方法については、社会福祉法人では、原則として定額法によることになっており、この方法によると、毎年の償却額が均等であるため償却計算が簡易であることと、償却費の負担が平均化する利点があります。

2 償却資産ごとの耐用年数を既存の耐用年数表に当てはめて適用する場合、構造や使用実態に即して判断しますが、「構造又は用途」「細目」の各欄にそのままでは類似のもの、該当するものがないときは、「前掲のもの以外のもの及び前掲の区分によらないもの」、「その他のもの」等の項目に当てはめて適用するとよいでしょう。

3 また、減価計算は、耐用年数が異なる個々の資産ごとに個別に計算しなければなりませんので、償却計算を(国庫補助金等特別積立金の取崩し計算を含む)個別に管理する固定資産管理台帳等の補助帳簿の作成が必要になります。

4 減価償却は、使用により償却資産の価値の減少額を、事業サービスを提供したコストとすることですから、事業ごとの収支の把握を目的とするサービス区分等の事業区分に適正に配分しなければなりません。国庫補助金等特別積立金取崩し額についても、同様です。

5 減価償却は、支払資金には関係しませんので、事業活動計算書とその内容表のみに計上されます。また、償却資産の貸借対照表の期末価格は、償却額だけ減額します。

○貸借対照表と収支計算残高との整合性

平成28年3月一部改訂

Q   貸借対照表と、資金収支計算書および事業活動計算書が整合しているかどうかをみるため、どの項目(科目)と項目を照合させる必要がありますか。
A

1 次の計算式より、資金収支計算書と貸借対照表の当期末支払資金残高の整合性の確認ができます。
{ 流動資産合計-(1年基準により固定資産から振替えられたもの+棚卸資産-貯蔵品) }-{ 流動負債合計-(1年基準により固定負債から振替えられたもの+引当金)}=支払資金残高

2 当期の貸借対照表の次期繰越活動増減差額と、事業活動計算書の次期繰越活動増減差額とは必ず一致します。

○共通経費の配賦基準

平成30年3月一部改訂

Q   複数の事業区分又は拠点区分又はサービス区分に共通する収入や支出、資産や負債の額について、各区分ごとに按分・配賦する基準は、どのようなもの(要素)が、考えられますか。
A

1 共通経費等を合理的な基準に基づいて配賦する場合には、収入・支出の項目ごとに、その発生に最も密接に関連する客観的な量的要素を選択して適用することになりますが、一つだけの基準(単一基準)のほか二つ以上の要素を組み合わせた複合基準によることもできます。
 なお、一度選択した配賦基準は特別な変更理由が生じない限り、毎年度継続的に適用することが求められます。

2 按分基準の具体例としては、人数、時間、面積、回数等の要素をもとにして次のようなものが考えられます。
 寄付、一般収入、雑収入         利用定員
 人件費                 勤務時間割合・人員配置割合
 福利厚生費               職員数
 水道光熱費・建物減価償却費       使用床面積
 固定資産・借入金等           利用実態

 なお、平成23年7月に制定された社会福祉法人会計基準では、共通支出及び費用の具体的な科目及び配分方法は、運用指針別添1に示されています。
 ただし、これによりがたい場合には、実態に即した合理的な配分方法によることとして差し支えないものとされています。

○財産目録の記載方法

平成30年3月一部改訂

Q   財産目録の記載は、財産の種類ごとに、法人全体を一括して、合算したものを作成してよいのでしょうか。
A

1 会計基準第四章の規定のとおり、財産目録は、法人全体を表示するものとします。その様式は、別紙4のとおりとされています。

2 財産目録の内容については、当該会計年度末におけるすべての資産及び負債につき、その名称、数量、金額等を表示するものとされており、当該金額は、貸借対照表記載の金額と同一の金額です。

○前年度会計処理の修正

平成27年3月一部改訂

Q   前年度の会計処理で、収入が過大に計上されていることが分かりました。このような場合、どのように修正したらよいでしょう。
また、支出の誤りの修正は、どのようにしますか。
A

1 決算が終了し、決算額が確定した後では、前年度の決算額を修正することはできないので、今年度の取引として処理しなければなりません。前年度の収入の修正事項では、前年度に請求した保険料収入等が今年度減額して決定された場合などがあります。

毎年度経常的に発生する収入科目では、今年度の収入額から直接控除する方法もありますが、これだと、収入額がその分だけ少なく計上されることになります。
(借方) 現金預金    90  (貸方) 未収金  100
(借方) ○○事業収入  10

介護報酬の場合は、会計基準で保険等査定減の科目が設けられていますから、同じようなケースを含めてこの科目を使うとよいでしょう。
(借方) 現金預金    90  (貸方) 未収金  100
(借方) 保険等査定減  10
 このほか、前年度の過誤請求や収入額の修正に雑費を使う方法もあります。

2 支出についてもほぼ同様に、
① 同種の取引科目がある場合は、その科目のマイナス取引として処理する。
② 類似科目・新設科目に計上する。
③ 雑損失として計上する。  等の方法が考えられます。

○建設積立金の計上

Q   建設積立金の設定は、どのような場合に必要ですか。
A

1 2年以上の年度にわたって、建物等の施設整備が行われる場合、当期に使われなかった建設資金は、そのままでは期末に次期繰越収支差額に含まれて表示されます。そこで、この繰越金が一般の繰越金ではなく、工事完了後には、基本財産となる資金であることを区分・明示するために、建設積立金として繰入れを行うものです。

2 また、これとは別に、将来、固定資産の更新をするために準備金として資金を留保・貯蓄しておく場合にも、この積立金に繰り入れを行います。いずれの場合も、実効性を担保するため、「その他の固定資産の部」に同額の建設積立預金を設け、支払資金からの繰入れをしておく必要があります。

○賞与引当金の計上

平成30年3月一部改訂

Q   決算において、賞与引当金は計上すべきでしょうか。
A

賞与引当金においては、法人の経理規程において「ただし、重要性が乏しいと認められる場合には、これを計上しないことができる」と規定している法人が多いと考えられます。ここでいう「重要性」に関する基準として全国社会福祉法人経営者協議会から発表された「社会福祉法人モデル経理規程細則15」には以下のように示されているので要約します。

1 重要性の判断は、計算書類等の利用者が誤りの無い判断ができるか否かを考慮して行う必要がある。

2 個々の判断における恣意性を排除するために、一定の基準を設け明示する。

3 前項の基準には次に掲げる事項を考慮して設定する。
 サービス活動収益に与える影響
 当期活動増減差益に与える影響
 資産の合計に与える影響

4 第一次的には前項の基準値に基づいて行うが、最終的な判断は次に例示する事項等を考慮して行うものとする。従って、金額が基準に満たない場合、あるいは、金額を持たない項目であっても、質的に重要性があると判定される場合があることに留意する。
 当該年度の財政状態、又は、経営成績の異常性の有無
 過年度の財政状態、又は、経営成績の異常性の有無
 臨時的、又は、異常な事象の発生を示す事項
 傾向値に影響を与える事項、増減差益をプラス(又はマイナス)からマイナス(又はプラス)に転換する事項
 開示項目あるいは開示内容の重要性

5 異常である場合には、サービス活動収益計、当期活動増減差益及び資産の合計について、単に当年度の影響のみを考慮するのではなく、過年度の数値を参考として正常な財政状態及び経営成績を算定し、それらも併せて考慮する。つまり、仮に原則どおり計上するとした場合の賞与引当金繰入額の金額が、上記3の範囲内であれば、、その計上は不要となります。
 しかしながら、賞与引当金繰入額は、人件費の重要な科目であり、質的にも重要な科目と考えられますので、上記4に該当すると判断される場合には計上することとなります。

○賞与引当金の戻入

平成29年3月掲載

Q   毎年度の決算時に賞与引当金を計上しています。引当金の額よりも実際に支払った金額が少ない場合には賞与引当金を戻し入れることにしたいと思いますが、新会計基準には賞与引当金戻入の勘定科目がありません。どのように仕訳をしたらよいでしょうか。
 (借方)賞与引当金  / (貸方)賞与引当金戻入
                 (科目の設定)
 (借方)賞与引当金  / (貸方)賞与引当金繰入額
                 (繰入額の科目で戻し処理)
 又は②のどちらで処理したらよいでしょうか。
A

差額補充法で処理することになるため、ご質問のいずれの方法でもなく、当年度の2回目以降の賞与に充当することになります。

○会計処理・予備費の使用

平成27年3月一部改訂

Q   予備費を財源として、一般の支出費目に充当した場合に、何か特別な会計処理が必要ですか。
A

1 予備費は、予算の編成上、将来の不確定な支出に備えて、収入見込み額のうちの一定の率の額を、特定の費目に属さない余裕金として計上し、一般の費目の予算が不足したときに充当するものです。したがって、あくまで予算書上の説明項目であって、会計上の勘定科目ではありませんから、これを財源として他の科目に流用し、その支出に充てた場合でも、通常の支出の仕訳以外の会計処理は必要ありません。支出の際は、通常の支出仕訳を行って処理します。

2 一般的にいえば、予備費は予算の編成に際して、予算書の中に盛込まれ、理事会で承認されている事項ですから、会計責任者の権限で費目流用ができますが、結果として予算科目の増減に関係しますので、その取扱いについては、経理規定の中で定めておくとよいでしょう。

○会計処理・車両の購入等

平成28年3月一部改訂

Q   自動車を取得する場合、どのような会計処理をすればよいでしょうか。
 例をあげて、説明してください。
A

1 購入時、全額一時払い
(借方)車両運搬具    10 (貸方)現金預金 10 (B/S)
(借方)車両運搬具取得支出10 (貸方)支払資金 10 (C/F)

2 分割払い
(借方)車両運搬具    10 (貸方)現金預金  2 (B/S)
                     未払金   8 (B/S)
(借方)車両運搬具取得支出 2 (貸方)支払資金  2 (C/F)

3 リース契約(所有権移転外ファイナンスリース取引で重要性が乏しい場合)
(借方)賃借料    1 (貸方)現金預金   1(P/L)(B/S)
(借方)賃借料    1 (貸方)支払資金   1(C/F)

4 全額寄付金
(借方)現金預金 10(貸方)施設整備等寄付金収入10(P/L)(B/S)
(借方)車両運搬具10 (貸方)現金預金       10 (B/S)
(借方)車両運搬具取得支出 10 (貸方)支払資金  10 (C/F)

5 現物寄付
(借方)車両運搬具 10 (貸方)固定資産受贈額10

6 車両の下取り、売却
(借方)現金預金  1 (貸方)固定資産売却収入 1(B/S)(P/L)
(借方)支払資金  1 (貸方)車両運搬具売却収入1(C/F)

注 B/S貸借対照表 P/L事業活動計算書 C/F資金収支計算書 数字は仮定

○会計処理・日本財団助成金(車両の購入)

平成28年3月一部改訂

Q   当法人ではこのたび、日本財団の助成金50万円を受けて、車両を購入しました。この助成金の処理は、寄付金、補助金のどちらになるのでしょうか。
A

日本財団等の民間補助事業についても、地方公共団体が独自に行っている補助制度による補助金に準じて取扱うことになります。
したがって、日本財団からの助成金については、寄付金として処理するのではなく、施設整備補助金収入として処理することになり、国庫補助金等特別積立金を積立てる必要があります。
また、車両の価格は、その助成金を控除する前の取得価格、即ち、自動車メーカーが収入すべき金額になります。

なお、具体的な仕訳は、次のとおりです。
≪仕訳≫
車両取得価格 1,500,000円
日本財団助成金 500,000円
自己資金   1,000,000円

(借方)車両運搬具 1,500,000      (貸方)現金預金 1,500,000

≪資金収支特有の仕訳≫
(借方)車両運搬具取得支出 1,500,000  (貸方)支払資金 1,500,000

(借方)現金預金  500,000  (貸方)施設整備等補助金収入 500,000

(借方)国庫補助金等特別積立金積立額 500,000   (貸方)国庫補助金等特別積立金 500,000

○会計処理・車両のリサイクル料金

平成23年3月一部改訂

Q   車両を購入しようとしたところ、自動車リサイクル料金を請求されましたが、どのように会計処理するのでしょうか。
A

平成17年1月1日から自動車リサイクル法(使用済み自動車の再資源化等に関する法律)の施行により、自動車の所有者は、リサイクル料金を資金管理法人(リサイクル促進センター)に預託することとなりました。  

このため、平成17年1月1日現在自動車を所有する者は、同日以降最初の車検時に、また、新車を購入する者は購入日に、リサイクル料金を負担することが義務付けられています。このリサイクル料金(資金管理料金*を除く)は、資金管理法人に対する預託金とされており、原則として、「その他の固定資産」に分類されます。

1 車輛の購入時
(借方)その他の固定資産/ 長期前払金×× (貸方)現金預金××

<資金収支計算書特有の仕訳>
(借方)その他の固定資産/ 長期前払金×× (貸方)支払資金××

2 廃車時
(借方)手数料×× (貸方)その他の固定資産/長期前払金××

<資金収支計算書特有の仕訳>
 (借方)支払資金××(貸方)その他の固定資産/長期前払金取崩収入××
 (借方)手数料×× (貸方)支払資金××
 *「長期前払金」に代えて、「長期預け金」や「預託金」の科目とすることも考えられます。
 * 自動車リサイクル料金の構成
・シュレッダーダスト料金 ・エアバック料金 ・フロン類料金
・情報管理料金      ・資金管理料

○会計処理・退職金

平成28年3月一部改訂

Q   退職金制度には、福祉医療機構によるもの、県共済によるもの、法人の退職給与規程によるものがありますが、それぞれの場合の会計処理は、どうなりますか。
A

1 退職給付引当金は、在職している職員の退職金の要支給額を、貸借対照表上の負債として設定するもので、費用として処理した毎期の要負担額を引当金として繰入れるものですが、制度によってその取り扱いが異なります。
 高額となる退職金を全部法人内部で準備することが困難なので、福祉医療機構等による外部の退職共済制度が利用されています。

2 福祉医療機構の退職手当共済制度では、機構が退職金の支払いを直接行うため、共済掛金相当額を資産として計上する必要はありません。また、退職給付引当金を設定する必要もないので、当該制度に基づく要拠出額である退職給付費用及び退職給付支出に計上します。(運用指針20(2)イ)

3 県共済の退職共済制度では、それぞれの法人が、退職時に共済金をもとに退職金を支払うので、実際には、退職金原資の運用委託に近い制度です。
 また、共済掛金の支払いは、外部に積立預金をするのと同様に預け金の性格を持ちます。従って、その掛け金は、貸借対照表の借方「その他の固定資産」の部に計上することが、税法上要求されています。また、貸方「固定負債」の部に、同額を退職給付引当金として計上します。(運用指針20(2)ウ)

4 法人が独自に退職給与規定を定めている場合は、本来は、退職金支給規程に基づき職員の勤務期間、昇給率、離職率、運用利率等による数理計算を行って退職一時金に係る債務の金額を算定し、これを基に退職給付費用を計上します。
 しかし、退職給付の対象となる職員数が300人未満である等一定の場合には、期末要支給額により算定した金額に基づいて退職給付期間及び退職給付引当金を計上します。(運用指針20(2)ア)

5 引当金の繰り入れは、資金の支出を伴わないので支払資金の増減には関係しませんが、特定預金を設定する場合は、支払資金の減少となります。引当金が、設定されているときは、退職金の支払い時には、退職給付引当金/現金預金という処理をします。

○会計処理・非常用保存食の購入

平成23年3月掲載

Q   非常用の保存食を購入しました。全部で10万円を超えてしまいましたが、どのような会計処理をしたらよいでしょうか。
A

食料品は、繰り返し使用するものではなく、消耗品としての特性をもつものであり、また非常用の保存食は、備蓄することをもって事業の用に供したと認められます。このため、購入時(備蓄時)に事業の用に供したものとして、その時の費用として計上されます。
 また、非常用の保存食については、利用者の処遇に直接要するかどうか不明確であるため、「事業費支出/雑費」に計上することが適当であると考えられます。

○保育事業における「私的契約利用料収益」

平成28年3月掲載

Q   保育事業収益の中区分科目「私的契約利用料収益」について、どのような際に利用する勘定科目か、教えてください。
A

会計基準においては、一時保育や延長保育等の事業を補助事業又は受託事業として行う場合、これらの事業における保護者からいただく利用料についても、「補助金事業収益」又は、「受託事業収益」に計上することになっています。
 このため、「私的契約利用料収益」については、保育所が独自に保育所から徴収する利用料を計上することになりますが、入所児童に関して保護者から徴収する主食費、習い事費用等については、上記との関係から「その他の事業収益」に計上することが望ましいと考えます。
 従って、「私的契約利用料収益」には、私的契約に基づく入所児童(私的契約児)の保育料を計上することになります。

○移行時特別積立金

Q   介護保険制度などの移行時に、特別に設定されることになっている移行時特別積立金・積立預金、又は特定施設での減価償却特別積立預金などは、どのような名目で設定されたのですか。また、その運用はどうなりますか。
A

1 介護保険など新しい仕組みの制度が発足するのに際して、従来の措置費と新制度の関係を会計上明確に区分して、今後の業績の把握を的確に行うため、移行初年度に繰越される収支差額(従来の繰越金)をいったん0にしてスタートさせることが必要です。このため、移行時に限り設定される特別の積立金が、移行時特別積立金です。
 具体的な処理は、移行時直前の繰越収支差額(期末繰越金)の額を、移行時特別積立金という名称の積立金に移行し、繰越収支差額を0にします。したがって、移行初年度の事業活動収支計算書の繰越活動収支差額の額(前期繰越金)は、0になります。このように移行時特別積立金は措置費制度のもとで生じた措置費を財源とする剰余金を別建てで管理しようとするものです。それを取崩して使用する場合には、一定の規制(使途制限)が設けられていましたが、その後の改正で、この積立基金の有効活用を図るため、資金使途の拡大や事前協議の撤廃などの弾力化が行われました。

2  一方、減価償却特別積立預金は、支払資金に余裕がある場合に計上する積立金の一つで、減価償却によって生じた内部留保の額を将来の大規模修繕費等の支出に備えるための資金として、別建ての特定預金にして管理するもので、前者とはやや性格が異なります。
 また、貸借対照表上、借方に積立預金として計上されるだけで、貸方に対応関係のある積立金が設定されるものではありません。

 (注)参考  12-3-10 老発188、老計8
        15-3-26 障発0326002
        15-7- 1 老発0701003

○移行時特別積立預金の使用条件の緩和

Q   特別養護老人ホームですが、移行時特別積立預金を使用する場合の条件は、どのようになっているのでしょうか。
A

平成12年3月31日以前に開設した、特別養護老人ホームが有する移行時特別積立預金については、「特別養護老人ホームにおける繰越金等の取り扱いについて」(注1)により、その使用が制限されていましたが、平成15年7月通知(注2)により、次のとおり、使用条件が大幅に緩和されました。

1 使用できる内容の緩和
① 社会福祉法第2条に規定する事業(注3)を経営するために、当該事業の用に供する施設並びに設備の整備、用地の取得に要する経費及び当該事業の運営に要する経費に充てることができるようになりました。
② 運営に要する経費には、決算処理に当たって欠損金が見込まれる場合の補填経費を含み、福祉医療機構からの借入金(平成10年9月以前に借り入れたものに限る)の繰上償還のための経費は含まれないとされました。

2 使用するための手続きの緩和
 あらかじめ理事会の承認を得るだけで、取崩すことが可能になりました。

3 つなぎ資金として流用している場合
上記1の取崩しは、あらかじめ積立金を積立預金と同額まで取崩したうえで行わなければならないものとされました。

4 社会福祉施設等施設整備費の国庫補助基準の算定
 別に定めるところにより、総事業費から積立預金の額を差引くものとされました。

  注1 平成12.3.10老発第188号第1-4
     平成13.8.17老計第35号

  注2 平成15.7. 1老発第0701003号 

  注3 社会福祉法第2条第2項第3号、第4号、第10号

○新会計基準とサービス区分の設定

平成28年3月一部改訂

Q   障害福祉サービス事業において、年間数十万円の少額な予算規模の事業でも、サービス区分として設定すべきでしょうか。
A

障害福祉サービスについては、基準省令上、各サービスごとに事業の会計を区分することを要請しています。したがって、少額な予算規模でもサービス区分の設定は必要であると考えられます。

これは、各サービスに応じて支援内容や利用対象者が異なり、それらに応じて報酬単価が設定されていることから、各サービスごとの収支状況を適切に把握する必要があるためです。
なお、他の事業と会計を区分する際、支出が一体不可分である場合は、実態に即した合理的な按分方法を基本としますが、収入按分等の簡便な方法でも差支えないとされています。[ 平成23年7月27日厚生労働省・社会援護局・福祉基盤課パブリックコメントの結果について No.168 ]

○特養における拠点区分又はサービス区分

平成28年3月掲載

Q   従来型の徳用とユニット型特養については、拠点区分、又はサービス区分で分ける必要があるのでしょうか。
A

平成23年9月1日に「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び、運営に関する基準」(平成11年3月31日厚生省令第39号)が改正され、一部ユニット型特養が廃止されたことに伴い、従来型の特養とユニット型特養は別々に指定を受けることとなったため、これらは別々の拠点区分とすることになります。(同基準第36条・第49条)

参考
「福祉法人会計基準適用上の留意事項(運用指針)」(平成23年7月27日雇児総発0727第3号・社援基0727台1号・障障発0727第2号・老総発0727第1号別紙い)4(2)ア

○新会計基準によるリース取引の会計処理

平成29年3月一部改訂

Q   新会計基準によるリース取引の会計処理の概要について教えてください。
A

新会計基準では、リース取引に係る会計処理については、次のように整理されています。

1 ファイナンス・リース取引
「ファイナンス・リース取引」とは、リース契約に基づくリース期間の中途において、その契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずる取引で、借手が、その契約に基づき使用する物件(リース物件)からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、そのリース物件使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引をいいます。
 このファイナンス・リース取引については、原則として『通常の売買取引に係る方法』に準じて会計処理を行うものとされています。
 したがって、リース資産を固定資産に計上し、これに対応するリース債務を負債として計上することとなります。
 ただし、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリース取引やリース期間が1年以内のリース取引については、オペレーティング・リース取引と同様の会計処理が認められています。
 なお、ファイナンス・リース取引の場合、リース資産についてその内容(主な資産の種類等)及び減価償却の方法を注記します。

2 オペレーティング・リース取引
 「オペレーティング・リース取引」とは、上記、ファイナンス・リース取引以外の取引をいいます。
 このオペレーティング・リース取引については、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うものとされています。
 なお、オペレーティング・リース取引のうち解約不能のものに係る未経過リース料は、貸借対照表日後1年以内のリース期間に係るものと、1年を超えるリース期間に係るものとに区分して注記します。

参考
 社会福祉法人会計基準注解 (注9)

○リース資産の会計処理

平成29年3月掲載

Q   今まで、各事務所の介護保険請求用ソフトを購入していましたが、本部がまとめてソフト(サーバー含む)を購入(リース契約)、費用は各事務所で負担することにしました。費用総額が300万円以上になりますので、リース資産として計上します。この際の計上は本部で行うことになるのでしょうか。
A

原則として、リース資産を各拠点区分における共通経費の配分基準に基づいて分割して計上します。当該リース資産の減価償却費は各拠点区分に計上すべきであり、減価償却費を計上するためには、これに対応するリース資産がそれぞれの拠点に計上されている必要があるためです。

○新会計基準による保険料の会計処理

平成26年3月掲載

Q   平成26年度の早い時期から新会計基準に移行を予定しています。自動車の保険料を今まで事務費の損害保険料で処理してきましたが、新会計基準では、事業費の保険料にした方がよいでしょうか。
A

新会計基準において、事業費の保険料に含めるものは、利用者に対する生命保険料及び損害保険料で下記のようなものが該当します。
 ・建物及び設備の火災保険料、店舗総合保険料、火災共済の掛け金
 ・施設賠償責任保険の保険料(これに類する保険の保険料を含む)
 ・自動車の自賠責任保険料、任意の自動車保険料
 ・保育所における日本スポーツ振興センター負担金
 ・園児又は入所者を対象とした損害保険又は生命保険の保険料

 また、新会計基準においては、事業費と事務費の双方に設けられている「水道光熱費」、「燃料費」、「賃借料」、「保険料」については原則、事業費のみに計上できます。
 したがって、御質問のとおり原則、事業費の保険料に計上することとなります。ただし、措置費、保育所運営費の弾力運用が認められないケースでは、事業費、事務費双方に計上します。[ 運用指針13(2) ]

○収益事業として定款に記載する場合

平成26年3月掲載

Q   当法人では、施設6階の屋上に、業者の依頼を受けて携帯電話用のアンテナを設置しています。設置料として年間約100万円の収入があり、電気代を差し引きすると、50万円ほどの利益があります。アンテナ設置に関し、「収益事業」として、定款に記載すべきでしょうか。
A

次のような場合は、「一定の計画のもとに、収益を得ることを目的として反復継続して行われる行為であって、社会通念上、事業として認められる程度のもの」に該当しないので、結果的に収益を生じるものであっても、収益事業として定款に記載する必要はありません。[社会福祉法人審査要領第1-3(1)]
(1)あくまで法人内部で使用を目的とする設備を、外部の者に依頼されて、その法人の業務に支障のない範囲内で使用させる場合(たとえば、会議室を、法人が使用しない時間に外部の者に使用させる場合等)
(2)たまたま適当な興業に恵まれて、慈善興業を行う場合
(3)社会福祉施設等において、専ら施設利用者の利便に供するため売店を 経営する場合。

したがって、御質問の場合には、(1)に該当し、収益事業として定款に記載する必要はないものと考えます。ただし、法人税法上は、収益事業としての不動産貸付業に該当します。

○社会福祉法人と印紙税

平成23年3月一部改訂

Q   介護保険などで利用者との間で作成する契約書、市町村等から業務の委託を受ける場合の契約書の印紙税は、どのような取扱いとなるのでしょうか。
A

1 介護保険制度等で、サービス事業者と利用者との間でサービスの提供について作成される契約書は、請負契約書に該当せず、原則として印紙税の課税文書に当たらないものとして取扱われます。

2 社会福祉法人が、市町村等との間で交わす業務委託契約書は、委任又は請負に関する契約書に該当します。委任に関する契約書は、印紙税の非課税物件とされていますが、請負に関する契約書は印紙税の課税物件に該当します。
 なお、請負契約書に該当する場合には、市町村は非課税であるため、社会福祉法人が自ら作成し、提出した1通のみに、印紙を貼付することになります。

3 サービス事業者が、利用者から利用料を受領した際に作成する領収書は、17号文書(売上代金に係る金銭等の受領書)に該当するので、課税文書です。しかし、社会福祉法人は、非課税法人ではありませんが、法でいう営業者でないので、その作成する領収書は、営業に関しないものとして非課税になります。寄付金領収書、授産事業、収益事業に関連して発行する領収書も同様です。

○個人と法人の寄付金控除

平成23年3月一部改訂

Q   寄付金控除について、寄付者が個人の場合と法人の場合のそれぞれについて、取扱いはどのようになっていますか。
A

1 社会福祉法人に対して、個人が支出した金銭での寄付金は、所得税で寄付金控除の対象となる特定寄付金に該当しますので、次の算式により計算した金額が寄付金控除の額となります。
  A その年中に支出した特定寄付金の額の合計額
  B その年中の総所得金額等の40%相当額
  算式:(AとBどちらか少ない方の金額)-2千円=寄付金控除の金額

なお、住民税の寄付金控除は、住所地の都道府県共同募金会に対して行った寄付金だけが対象になります。また、法人設立に際して贈与される寄付金で、指定寄付金以外のものは、寄付金控除の対象になりません。

2 法人が支出した寄付金のうち、国等へのものを除く一般への寄付金については、一定の限度額を超過する部分の金額は、損金に算入されません。その算入限度額の算式は、次のとおりです。
  A 期末の資本金等の金額×当期の月数/12×2.5/1000
  B 当期の所得金額×2.5/100
  算式:(A+B)×1/2=損金算入限度額

3 法人が寄付金を支出した場合に、全額損金算入ができる寄付金は、
 1 国又は地方公共団体に対する寄付金(法人税法37③一)
 2 財務大臣が指定した指定寄付金(上記37③二)

4 社会福祉法人等の業務に関連した寄付金は、一般の寄付金と別枠で、一般寄付金の損金算入限度額までの金額を上乗せして、損金に算入することが認められています。

注 支出した寄付金:現実に支払いをした寄付金をいい、単なる寄付の申込や手形の振出しなどは、該当しない。
・特定寄付金:所得税法78②三 同法施行令217①五
・住民税の寄付金控除:地方税法34①五の四 同314の2①五の四
・指定寄付金:所得税法78②のうち財務大臣が指定した寄付金

○社会福祉法人への寄付に係る税額控除(所得税)

平成25年3月掲載

Q   社会福祉法人へ寄付をした場合、所得税額から控除(税額控除)されるそうですが、制度の概要について教えてください。
A

社会福祉法人については従来から、前ページのような所得控除制度があります。(今後も継続します。)
 これに加えて、平成23年度の税制改正によって税額控除と所得控除のいずれかを寄付者が選択できるようになりました。

1 まず、法人が税額控除対象法人となります。
 税額控除対象法人となるには、社会福祉法人認可を受けた所轄庁に対して申請し、以下の2つの要件のうち、いずれかを満たしていれば証明を受けられます。
 (1)原則として、3,000円以上の寄付金を支出した者が、平均して年に100人以上いること。
 (2)経常収入金額に占める寄付金の割合が、5分の1以上であること。
 なお、要件の適合を判断する「実績判定期間」は、直前に終了した事  業年度から遡って5年間(平成23〜25年の間は2年間)となっています。
 また、措置費(運営費)、介護給付費(原則50%)、障害者自立支援給付費については、経常収入には含まれません。

2 税額控除
 以下により計算した金額です。
{税額控除対象寄付金の額の合計額-2,000円}×40%=税額控除額
 (総所得金額の40%が限度)         (所得税額の25%が限度)

また、住民税についても、所在地の都道府県、市町村が住民の福祉に寄与するものとして、条例で指定した寄付金を税額控除の対象とする制度があります。
 注 参照条文:租税特別措置法41の18の3

○相続税の法人側の税務問題

Q   遺言等により、社会福祉法人が財産を取得した場合、法人に相続税は課税されるのでしょうか。
A

1 社会福祉法人が、遺贈により財産の提供を受けたときは、相続税は原則として課税されません。
 相続税の納税義務者は個人ですから、一般に法人には課税されませんが、遺贈等によって法人が財産の提供を受ける場合、普通法人では通常の収入として計上し、その分の法人税を負担します。公益法人(社会福祉法人を含む)には、法人税や相続税が課税されませんので、課税の均衡上、特定の場合に限って、公益法人にも法人税に代わって相続税を課税する取扱いが設けられているのです。
 その特定の場合とは、「遺贈者の親族等特別の関係のある者の相続税の負担が、その遺贈等によって不当に減少する結果となるとき」です。このような時には、法人を個人とみなして、贈与を受けた法人に相続税を課税します。この、みなし課税の扱いは、法人設立時の寄付にも適用されます。

2 贈与税も個人を対象とした税ですから、公益法人には原則として適用されることはありませんが、前例のように、財産の提供者やその同族関係者が、法人と特殊な関係によって、提供した財産を私的な目的に利用するような場合には、相続税の場合と同様に、例外的にその法人を個人とみなして課税することになっています。また、この規定は、その後に生じた事実関係についても、適用になります。

3 贈与といっても、社会一般の通念で通常の寄付と同程度と認められるものについては、贈与税の問題は生じません。

注 参照条文:相続税法66④、昭和55直資2-181 租税特別措置法70

○相続財産の寄付にかかる相続税

Q   入所者が死亡したとき、その財産を相続した者から相続財産の一部を寄付する申し出がありましたが、その場合、相続人の税負担はどうなりますか。
A

1 いったん、相続した財産の寄付のケースです。相続を受けた者(相続人)からの寄付申出があっても、実際には、死亡した者(被相続人)の意思を尊重して寄付されることが多いことから、公益法人等への寄付は、相続による財産の取得後であっても、非課税とされます。
 ただし、その場合の条件は、
 ① 寄付者は、相続又は遺贈により財産を取得した者であること
 ② 贈与した財産は、相続や遺贈により取得した財産であること
 (財産を処分した代金の寄付は、対象にならない)
 ③ 相続税申告書の提出期限である10ヶ月以内になされた寄付であること
 ④ 関係者の税負担の不当な減少にならないこと
 ⑤ 寄付の対象となる法人は、すでに設立されている法人であること
  等です。

2 また、贈与した財産が土地など譲渡所得の発生するものである場合には、みなし譲渡の問題が発生しますので、それを避けるためには、みなし譲渡課税の特例の承認を受ける必要があります。
(注) 1 みなし譲渡:無償での贈与でも、贈与した個人がその資産を保有していた期間中の値上がり益(時価-取得価格)があるとして、その値上り益相当額を資産の贈与の際に、所得として課税するものです。
   2 低額で資産を譲渡した場合(時価1/2未満)には、みなし譲渡課税の特例は、適用されません。

   参照条文:所得税法59①一、二  同施行令169

   租税特別措置法40の1 同施行令25⑰二、三

○譲渡所得の非課税の特例

平成30年3月一部改訂

Q   個人が、社会福祉法人に土地等の不動産を寄付した場合に、寄付者に対して、譲渡所得税の非課税の特例がありますか。
A

1 個人が、資産の所有権を他に移転させることを譲渡といいます。これには、一般的な売買のほか、交換、収用、贈与、遺贈等が含まれますから、個人が社会福祉法人に対して、その資産を贈与や遺贈により無償で譲渡した場合でも譲渡になります。また、寄付であっても、その時の時価によって譲渡があったとみなして、寄付者の個人に対し、譲渡所得税が課税されます。
 (みなし譲渡  所得税法59①一)

2 しかしこのような場合であっても、租税特別措置法40条の規定により、一定の要件を満たし、国税庁長官の承認を受けた時は、みなし譲渡の課税の適用がないものとされ、その譲渡所得にかかる所得税は、非課税となります。この特例は、法人を設立するための財産の寄付にも適用されます。
 ただし、個人ではなく、法人から寄付を受ける場合は、適用されません。

3 この場合の一定の要件としては、
 ① 社会福祉等公益の増進に著しく寄与すること
 ② 贈与を受けた法人が、2年以内にその財産を公益事業に使用するか又はその見込みであること
 ③ 贈与者やその親族等の所得税等の不当な減少を招かないこと
  等とされています。

4 この特例の適用を受けようとする場合は、寄付をした日から4カ月以内に、所定の事項を記載した承認申請書を、所轄税務署に提出します。

5 承認、不承認の結果は、文書で通知されます。承認された場合でも、承認の要件に該当しなくなった場合には、その承認は、取り消されます。

6 寄付された財産が、土地建物、株式のように譲渡所得を生ずる財産の場合は、みなし譲渡課税の問題が発生しますから、関係者、税務署側と十分に調整しておく必要があります。

7 平成29年度の税制改正により、社会福祉法人に対する贈与等で当該社会福祉法人の従員等以外の者からのもののうち、その贈与等に係る財産で当該社会福祉法人の基本金に組み入れられるものについては上記4の申請書の提出後1か月以内に承認又は不承認の決定がなかったときは、その申請は承認されたものとみなされることとなりました(措令 25の17①)

○社会福祉法人に用地を譲渡した者に対する課税の特例

Q   個人が、社会福祉法人に施設用地として土地を売る場合に、税制上有利な特例制度がありますか。
A

1 個人が、その所有する土地・建物を一定の公共事業のため売却した場合は、土地収用に準じて「収容等により土地を譲渡した場合の所得税の特例(特別控除制度)」があります。
 これは、一定の要件を満たした場合に、譲渡所得の金額から5000万円(所得額がそれに満たない時は、その金額まで)を特別控除することができるとする軽減措置です。(租税特別措置法33の4)
 対象となる施設は、社会福祉法人が設置する老人デイサービスセンター、老人短期入所施設及び第1種社会福祉事業に係る社会福祉施設、定員20人以上の保育所です。

2 事業の施行者(法人)と税務署との間で、特例制度の適用の可否を事前に協議し、譲渡所得の課税の特例に該当する事業であることの確認を、あらかじめ取っておくことが前提です。事業者はその事業の施行に関する各種の証明書を発行する義務があります。また、実際の適用に当たっては、たとえば、買取り等の申し出をした日から、6カ月以内に譲渡されたものであることなど、細かい認定要件がありますから、これらの条件を完全に満たす必要があります。

○消費税の課税事業者となる判定基準

Q   平成15年度の消費税改正で、免税点や簡易課税の適用上限の引下げなどが行われました。これらの改正は、社会福祉法人にどのような影響がありますか。
A

1 今回の改正で、免税点となる課税売上高が1000万円に引下げられましたので、それを超える収入(売上高)のある法人に、新たに納税義務が生ずる(課税事業者となる)ことになりました。

2 この課税事業者の判定の基準となる売上高は、今期の売上高ではなく、前々期の売上高(2年前)のものです。したがって、前々期1000万円超で、今期にそれ以下であっても課税事業者となりますし、前々期1000万円以下であれば、今期がそれ以上であっても、免税事業者になります。2年以内に新設された社会福祉法人には基準売上高がありませんから、最初の課税期間については、納税義務が免除されます。

3 課税売上高は、消費税が課税される取引に係る収入の合計です。社会福祉法人は、事業の性格から、消費税の対象外の取引(不課税取引)や非課税取引が多く発生するのが特徴で、そのため、課税売上高は、全体の収入から不課税取引と非課税取引に係る収入額を控除して算出します。

4 課税対象額の不課税収入とは、補助金、寄付金、借入金などをいい、一方、非課税収入は、社会政策上課税しないもの等で、具体的には、法的、制度的に規定されているものをいいます。

5 社会福祉事業は、ほぼ全面的に非課税取引とされていますが、なかには、消費税の課税される取引もありますので、個々に確認する必要があります。実務的には、収入種別ごとに作成した収入分析表等によって、個々に判断するとよいでしょう。
 注 非課税となる社会福祉事業等 消費税法別表第1七ロ 同施行令14③

6 簡易課税制度を選択できる基準売上高も、5000万円以下に引下げられました。この制度は、課税売上高とその事業区分だけで納税額を計算できますから、課税仕入れに係る各種調整計算が不要となり、事務処理が簡便に済みます。仕入れに係る調整計算が複雑な社会福祉法人には、その面でのメリットが多いとおもわれます。

○市が設置した社会福祉施設の経営委託と消費税

平成26年3月掲載

Q   当法人は、市が設置した社会福祉施設の経営を委託されました。この場合の委託料に消費税等は課税されるのでしょうか。
A

地方公共団体が設置した社会福祉施設の経営を社会福祉法人に委託する場合において、地方公共団体から当該社会福祉法人に支払われる委託料は、消費税法別表第1第7号ロ《社会福祉事業等に係る資産の譲渡等》に規定する社会福祉事業として行われる資産の譲渡等に該当することから、非課税とされています。
 しかしながら、同号の規定により非課税となる社会福祉施設を経営する国、地方公共団体又は社会福祉法人等が、当該施設の一部(たとえば、送迎サービス、給食サービス、清掃サービス等)を他の事業者に委託する場合、当該委託に係る業務が社会福祉事業として行われる資産の譲渡等に該当する場合を除き、当該業務に係る委託料は非課税となりません。(消費税法基本通達6-7-9)
 したがって、貴法人が受領する委託料について、消費税は課税されません。



○福祉有償運送事業における送迎代と消費税

平成28年3月一部改訂

Q   身体障害者療護施設ですが、新たに福祉有償運送事業を開始する予定です。利用者から収受する送迎代は、消費税の対象となるのでしょうか。
A

「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」に規定する、次の事業について、消費税は非課税とされます。
 ① 障害者福祉サービス事業(一定の事業において、生産活動としての作業に基づき行なわれる資産の譲渡等は除きます。)
 ② 一般相談支援事業及び特定相談支援事業
 ③ 移動支援事業
 ④ 地域活動支援センターを経営する事業(生産活動としての作業に基づき行なわれる資産の譲渡等は除きます。)
 ⑤ 福祉ホームを経営する事業

 したがって、福祉有償運送事業で、第二種社会福祉事業の「移動支援事業」の届け出をした者について、利用者からの送迎代は、消費税の課税対象となりません。

 注 障害者総合支援法 第77条 第79条
    消費税法基本通達 6-7-5

○永年勤続者に対する記念品に係る課税

Q   このたび、永年勤続者に対して記念品を贈りたいと考えていますが、課税上の問題があれば、教えてください。
A

永年勤続者に対する表彰と記念品贈呈は、一般に広く行われています。したがって、このような件についてまでも課税することは、社会通念上妥当ではない、という配慮から、次に掲げる条件のいずれにも該当する場合は、課税されません。
 ① その記念品として、旅行、観劇に招待し、又は記念品(現物に代えて支給する金銭は含まない)を支給することにより、役員又は使用人が受ける利益の額が、当該役員又は使用人の勤続期間等に照らし、社会通念上相当であると認められること
 ② 当該表彰が、おおむね10年以上の勤続年数の者を対象とし、かつ、2回以上表彰を受ける者については、おおむね5年以上の間隔をおいて行われるものであること
 注 所得税法基本通達36-21

○講演の講師に対する「車代」と源泉徴収

平成24年3月掲載

Q   当法人では家族介護教室を開催し、講師の先生に対し講演料のほかに別途車代として実費相当額を支払いました。この車代について、源泉徴収は必要でしょうか。
A

車代(宿泊代とも含む)が実費相当額であるとしても、講演のための対価と認められますので、講演料と合わせて源泉徴収することとなります。
 ただし、旅費や宿泊費などを講師に対して支払わないで、貴法人が直接交通機関やホテル等に支払い、かつ、その金額が、通常必要であると認められる範囲内のものに限り、源泉徴収しなくても差し支えありません。
 (関係法令等) 所得税法基本通達 204-2 204-4